コラム

読むことと心理学の関係

2018.2.28 心理
  • 心理カウンセラー
  • こころ検定(R)

 

 

「読む」とは、専門的にどのように定義されるものなのでしょうか。

 

一般的には、人間の言語行動のうち、文字など書かれた記号を手がかりに言語を理解する受容過程のことであるとされています。
言語学の領域において「読み」とは、通常、文ないし語の解釈を指します。

 

心理学の1分野である言語心理学の領域では、読みの基礎単位、文字や語の同定までの時間、語の同定に及ぶ文脈の影響等などが、かつては盛んに研究されていました。

 

その後、1990年が国際識字年であったことから、80年代後半から非識字者や失読症者に関する研究も盛んに行われ始めました(1990年の記念すべき年を前に、研究を先にスタートしたということです)。
また、日本においては漢字と仮名の神経心理学的処理過程の相違などについての研究が盛んに実施されています。

 

 

一般的に「読む」ということについては、速読が注目されることが多いのではないでしょうか。

 

通常、大人の読書速度は漢字仮名混じり文で1分間に400字から800字といわれています。
速読といった場合、1分間に1万字以上の読解を指すことが多いとされています。
内容についての概略の印象を得る、あるいは特定の事項を探し出すための読み方を走り読みともよびます。

 

通常、集中力の増大、視点移動の敏速化、視幅拡大によって読字速度が増すといわれています。
ただし、単に「読む」といっても内容の十分な理解を伴わなければ意味がなく、理解の深さの程度や読解素材の難易度によって、読解速度に変動が生じることが判明しています。

 

教育心理学の領域では、児童の読書力を養成することを目的とする読書教授法の一環として、かなり昔から研究されてきています。
従って、近年のようにビジネス場面での速読術が流行る以前から、学術的に速読が研究されていたということになるでしょう。

 

 

単語や文章を読む能力は認知機能の発達と関連しています。
そこで、読みの能力を測定・評価する検査として、読書レディネス・テストがあります。

 

このテストは読書開始(話し言葉から書き言葉への移行)のための認知発達の準備状態を測るテストです。
また、読書開始の準備指導、読書開始期における読書困難児の診断や支援に用いることもできます。

 

テスト内容には、読書開始を支える能力である、①お話を聞く(記憶、構成課題)、②絵本を読む(絵の指示、事物の理解課題)、③文字を理解する(絵と文字の結合課題)などが含まれます。

読書レディネス・テストは、主に小学校入学前後の幼児、児童に対して実施されます。
また、それ以降の児童に対しては、別の検査である読書能力テストがあります。

 

 

単語や文章を読むという能力に問題がある場合、それが疾患であることもあります。
視覚や聴覚の障害、運動機能の障害などが認められず、全般的な知的発達にも遅れがないにもかかわらず、文字を読む際に文字や行の読み飛ばし、形の類似している他の文字への読み誤りが生じ、その結果、学習活動や日常生活において著しい困難を生じている障害を読書困難とよびます。

 

聞く・話す・書く・読む・計算するといった特定の能力の1つあるいは複数に障害がみられる場合は限局性学習症と診断されることがあります。
特に読字に関する障害のみが認められる場合、それは限局性学習症の病型分類として、より限定された能力に関する障害ということになります。
また、視覚は健常だが後天的脳病変により読字あるいは書字言語の理解が障害された状態のことを失読とよびます。

 

 

読むことに関する疾患だけではなく、読むということを活かした心理療法もあります。

 

読書療法とよばれるこの療法は、選ばれた題材の読書を通じて進められます。
選ばれる書籍は何らかのテーマ性のあるものですが、育児・職業などに関する適切な情報の提供や、ストレスなどの精神健康に関する知識の提供、士気の高揚、治療者とのコミュニケーションの促進、空想物語による緊張の緩和、パーソナリティーに関する洞察の獲得などを目的とすることが多いです。

読書療法は遊戯療法の一部として同様の子どもたちに物語の読み聞かせを行うなど、他の心理療法の補助技法として行われることもあります。

 

 

 

このように「読む」ということ1つを取り出してみても、心理学的に様々な角度から検討が実施されているのです。

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