コラム

防犯カメラの日と心理学の関係

2025.7.3 心理
  • 認知心理学
  • 知覚心理学
  • 犯罪心理学

防犯カメラの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

 

【目次】

  1. 1.7月8日は「防犯カメラの日」
  2. 2.犯罪心理学と防犯に関する研究について
  3. 3.語法効果とは
  4. 4.まとめ

 

1.7月8日は「防犯カメラの日」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。7月8日は「防犯カメラの日」に制定されています。これは株式会社ジャパン・セキュリティシステムが制定したものです。きっかけは「な(7)くなれ犯(8)罪」という日付の語呂合わせからです。この日は防犯カメラの必要性・重要性を多くの人に考えてもらう機会を作り、防犯カメラの認知度を高めることが目的となっています。また、この会社では国内初となる屋外赤外線LED一体型カメラの販売・普及を実施しています。この会社の販売する会社の防犯カメラは官公庁やマンションやコンビニ、デパートや医療機関など全国の様々な場所で導入されています。

 

では、防犯と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

 

2.犯罪心理学と防犯に関する研究について

欧米では1960年代に防犯対策に強い関心が寄せられたことを受けて、犯罪心理学の中で防犯に関する研究が進められました。防犯については、個人的な対策、環境境に基づく対策、地域的対策、情報に関する対策などがあります。日本においては、子どもを犯罪被害から守るという観点からの防犯に関する研究も盛んです。子どもを犯罪の被害から守るためには、保護者・学校・地域社会が一体となって防犯対策に取り組む必要があります。さらには、子ども自身が他者(犯罪者)からの誘いに乗らないように、危険を察知して回避することができる能力を持っているかということも重要です。

 

さらに、防犯カメラとも関連する事柄として、犯罪の目撃証言の問題があります。代表的なものの1つに、事後情報効果とよばれるものがあります。これは、何らかの事件を目撃した後でニュースや第三者や捜査機関の人物から情報を見たり聞いたりすることで、その情報のためにオリジナルの記憶が変形したり、再構成されたり、失われたりするという現象です。もう1つ、代表的な目撃証言に関する問題として、凶器注目効果とよばれるものがあります。これは目撃者が武器をもった犯人を何らかの状況で目撃した場合、目撃者はその犯人の顔よりも凶器の方に注目し、犯人の顔に関する知覚や記憶が成立しにくくなるという現象です。

 

このように、知覚心理学・認知心理学・犯罪心理学の研究から、人間の目撃証言の信憑性には問題があるということが判明しています。そこで重要となるのが防犯カメラです。防犯カメラが各所に設置されていることで、録画・録音された映像や音声が記録されることになります。そして、これらの映像や音声は事後情報効果や凶器注目効果の影響を一切受けることなく、証拠として採用することが可能です。

 

3.語法効果とは

また、目撃証言に影響を及ぼすものとして、語法効果というものもあります。これは、犯罪や事故の目撃者への質問の仕方が証言に影響してしまうというものです。たとえば、自動車事故に関する映像を見た後に「自動車が『激突した』時に車はどれくらいのスピードで走っていましたか?」と質問します。そして、同じ質問ですが「激突した」の部分を「衝突した」や「突き当たった」「ぶつかった」「接触した」などに変更した質問も実施してみました。実験の結果「激突した」という質問を受けた参加者のスピードの報告が他の表現と比べて速いということが判明しました。実験参加者は全員、同じ事故映像を見ているにもかかわらず、質問の中の1つの表現が異なることで、報告結果が異なってしまうわけです。同様の実験として、オリジナルの事故映像の中には車の窓ガラスが割れたという映像は無いにもかかわらず「割れたガラスを見ましたか?」というの質問をしてみました。すると「激突した」という表現を使用した質問の方が「ぶつかった」を使用した質問より多く「割れたガラスを見た」と回答するということが判明しました。このように、私たち人間は見たものを正確に報告することが難しく、事後情報や凶器、質問の表現などの影響を受けてしまうということが分かりました。ただし、語法効果も事故映像が防犯カメラ等に記録されていれば、そこからスピードがどれくらい出ていたのかも算出することができるので、人間の証言に100%頼り切りになることはないわけです。

 

4.まとめ

このように、防犯や防犯カメラと心理学には、様々な関係性があり、現在も研究が進められているのです。

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連記事