コラム

仕事と感情の関係の心理学

2023.8.10 心理
  • こころ検定2級
  • ストレス
  • 心理

仕事と感情の関係は心理学において、どのように研究されているのでしょうか 

 

 

私たちは仕事において、様々な感情を抱くことがあります。
部下に怒ったり、失敗して落ち込んだり、将来を考えて不安になったりするということもあるのではないでしょうか。
一方で、感情そのものが仕事になっているというケースもあります。
 

 

私たちは職業上の必要性から、自身の感情をコントロールするということを“仕事”・ “労働”として実施することがあり、こういった労働のことを感情労働とよびます。
従業員が自身の肉体を動かすことでパフォーマンスを発揮することを肉体労働とよび、自身の脳に蓄積された知識や情報処理能力を発揮することを頭脳労働とよびますが、感情労働は従業員が自身の感情を使用・コントロールすることでパフォーマンスを発揮するものであると定義されています。
 

 

感情労働における感情のコントロールは、従業員が所属する企業・組織にとって望ましい感情を生起させることであり、これは必ずしも従業員自身の内的な状態とは一致しないことも多いです。
例えば、顧客を喜ばせる・楽しませるということが業務上必要となった場合、対応する従業員自身の中で“喜”や“楽”などの感情が実際に生起していなくても、笑顔を作ったり、声を出して笑うことがあるかと思います。
また、企業・組織や従業員自身には何の過失も無かったとしても、顧客から謝罪を要求された場合、対応する従業員自身の中で実際に罪悪感や後悔などの感情が生起していなくても、頭を下げて謝罪したり、声のトーンを落として会話をしたりすることもあるのでないでしょうか。
さらには、顧客からの理不尽な要求に対して、従業員自身が本当は怒りを感じていたとしても、表情や声に怒りが滲み出るのを抑えて、平静な対応をすることもあるのではないかと思います。
こういったものは、全て感情労働に該当するものであり、従業員の感情を一種の“商品”として扱い、感情を“販売”するということ行為なのです。
 

 

感情労働には主に2つに分類することができます。
1つは表層演技とよばれるもので、感情が顧客や該当する他者にとって望ましいものであることを装うために従業員が表情や仕草を実際の感情とは異なる状態に変化させることです。

もう1つは深層演技とよばれ るもので、これは顧客や該当する他者にとって望ましい感情を従業員自身が生起させたり、自らの感情をコントロールすることを指します。

感情労働は自らの実際の感情とは異なる感情の生起や、実際の感情と一致しない行動・態度を生起させることになるため、感情の葛藤状態である感情的不協和を引き起こす場合が多いです。
感情的不協和は心理的な不快感をもたらすものであり、ストレッサーとなるものでもあります。
従って、感情労働に従事することで、心身の不調や仕事に対する 満足度の低下などが発生することがあります。
感情労働に関する様々な研究の結果、対面もしくは音声によって顧客と接することが不可欠な業務や、顧客に何らかの感情変化(感謝や安心など)を引き起こさせなければならない業務、管理職が研修等を通じて、従業員の感情をある程度管理している職場などにおいて、感情労働が非常に多いということが判明しています。
そして、こういった要素が多いのは、いわゆる第三次産業に従事する対人援助サービス者全てに関連するものであると考えられます。
そのため、感情労働に関する初期の研究が航空機の客室乗務員や債権回収業者、教員や看護師を対象としていたということもありました。
現在は、飲食店やコールセンター、アパレル関連のショップ店員など、非常に多くの対人援助サービスがあふれており、こういった職種・職業に従事した経験があるという方も多いのではないでしょうか。
誰しもが経験する可能性が高い職種・職業であるがゆえに、感情労働がもたらすメンタルヘルス上の問題は心理カウンセリングなどにおいても重要性を増しつつあるのです。

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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