心理

2018/1/29

ワーキング・メモリーとは

人間の記憶の機能の1つとして、ワーキング・メモリーがあります。当たり前のように生活することができているのは、ワーキング・メモリーによるところが大きいと考えられます。

人間の認知機能の代表的なものとして、記憶に関するものがあります。

人間の記憶は感覚記憶・短期記憶・長期記憶の大きく3つに分けられます。

ただし、私たちの記憶の機能は単に物事を覚えるという機能だけではなく、情報を処理するという機能も持ち合わせています。

この情報処理能力のことをワーキング・メモリー(ワーキングメモリともよび、日本語では、作動記憶(作業記憶)とよばれる)とよびます。

このワーキング・メモリーは私たちの認知機能において非常に重要なものであるため、日本ワーキングメモリ学会という学術団体が設立されています(2017年は12月に年次大会が開催されます)。

では、その重要な機能であるワーキング・メモリーとは、どのようなものなのでしょうか。

ワーキング・メモリーとは、短期記憶の概念を発展させたものであり、短期記憶が情報の貯蔵機能(覚えておくこと)を重視する機能であるのに対し、ワーキング・メモリーは他者とのコミュニケーションや読書、計算、推理など様々な認知機能の遂行中に情報がいかに操作・変換されるかという情報の処理機能を重視する機能です。

私たちの記憶の機能である感覚記憶、短期記憶、長期記憶は互いに連携しています。

感覚記憶とは、知覚した出来事や事柄がまだエネルギーの状態になっているものを指します。

感覚記憶は約0.25~1秒程度しかエネルギーを保管しておくことができません。

そこで、必要なもの、重要なものにのみ注意を向けることで、エネルギー状態の感覚記憶を符号化し、エネルギーから情報に変換します。

これが、短期記憶です。

短期記憶は約15~30秒という時間的な容量と合わせて、保管できる情報の個数がある程度決まっています。

様々な実験の結果、私たちが短期記憶によって一度に覚えておけるのは5~9個で、平均は7個であることが判明しています。

これを、マジカルナンバー7 ± プラスマイナス2とよびます。

しかし、約15秒~30秒の時間や平均7個の量しか覚えておけないとなると、例えば、学校の授業中に先生が言ったことや、読書中に読んだことなどは、耳や目から情報が入ってきた途端に忘れていってしまうことになります。

このコラムをお読みになっている方の場合、冒頭の「人間の認知機能」で既に7文字となります。

そして、ゆっくりと文章を読んでいるのであれば、ちょうどこれくらいの部分で約15秒は経過していることになります。

つまり、せっかくここまで読んだにもかかわらず、次の行からは前に書かれていたことを全て忘れてしまうということになってしまうでしょう。

ですが、実際の私たちの日常生活では、そのようなことは起こらないでしょう。

それはワーキング・メモリーの機能によるものです。

ワーキングメモリーは現在進行形で実施されている作業(読書や会話など)に関する情報を逐次処理していくものです。

私たちは既に知っている事柄と全く知らない事柄とでは、情報処理に必要なパワーが大きく異なります。

そのため、現在進行形の作業で発生した情報をふるいにかけていくことで、複雑な作業や長い文章の講読をスムーズにこなしていくことができるのです。

ワーキング・メモリーによって処理され、必要と判断された情報は短期記憶から長期記憶へ送られます。

私たちが日常会話で使う“記憶”とは、この長期記憶に保管された情報のことを指します。

ワーキング・メモリーは言語的情報の処理のための音声ループと視覚的・空間的情報の処理のための視空間スケッチパッド、およびこれら2つの下位システムを制御する中央制御部から構成されています。

音声ループとは、たとえばインターネットで調べたレストランの電話番号を押し終わるまで口で唱える場合などに機能します。

つまり、音声ループは内なる耳の働きや、言葉を話すために準備している単語を保持しておく内なる声の働きをするものです。

これに対し、視空間スケッチパッドは内なる目に相当するもので、サッカーでゴールキーパーが敵チームからシュートの軌道を思い浮かべてタイミングを計ったりする場合などに機能します。

このように、私たちが今、当たり前のように生活することができているのは、ワーキング・メモリーによるところが大きいのです。

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