コラム

ワーキング・メモリーとは

2019.11.21
  • こころ検定2級
  • 認知心理学

記憶に関する機能・能力として、ワーキング・メモリーというものがあり、主に認知心理学において研究されています。

 

 

 

認知心理学において、人間の記憶は保持時間の長さによって、感覚記憶・短期記憶・長期記憶に区分することができるとされています。

 

感覚記憶とは、感覚刺激を感覚情報のまま保持する記憶で、その保持時間は視覚情報の場合は数百ミリ秒以内、聴覚刺激の場合は数秒以内とされています。

 

最近の研究では、感覚記憶は記憶情報というよりも、一種のエネルギーの状態ではないかともいわれています。

 

そして、この感覚記憶に入力された情報の中で、注意を向けられた情報は符号化され、一時的に短期記憶に貯蔵されます。

 

短期記憶の容量には限界があり、その容量は記憶範囲検査によって測定することができます。

 

記憶範囲検査では、数や文字の系列を聴覚的に提示し、直後にその内容を再生してもらいます。

 

例えば、5739のようなランダムな数字の系列を読み上げ、それを順序どおりに再生してもらうというものです。

 

この検査によって測定される記憶範囲は、成人の場合でも7±2程度にとどまることが知られており、心理学者のミラーは、これを「マジカルナンバー7±2」とよび、短期記憶において一度に処理できる最大の情報量であるとしました。

 

また、短期記憶は保持時間にも限界があり、通常15~30秒程度と考えられています。

 

従って、短期記憶に保持されている情報は、この保持時間中にリハーサルなど情報を長期記憶にするための記銘処理がなされなければ忘れられていってしまいます。

 

記憶に関する研究では、人間が“いかに物事を覚えるのか?”ということと合わせて、“いかに物事を忘れてしまうのか?”という点についても検討されています。

 

 

記憶にはワーキング・メモリーというものがあります。
これは、作動記憶(作業記憶)ともよばれるものであり、短期記憶の概念を発展させたものです。

 

ただし、短期記憶が情報の貯蔵機能を重視するのに対し、ワーキング・メモリーは、会話・読書・計算・推理など種々の認知機能の遂行中に情報がいかに操作され変換されるかといった情報の処理機能を重視するものとなっています。

 

心理学者のバッデリーはワーキング・メモリーに関する研究の第1人者として、メカニズムについて検討しています。

 

バッデリーが提唱したモデルでは、ワーキング・メモリーは言語的情報の処理のための音声ループと、視覚的・空間的情報の処理のための視空間スケッチパッドおよび、これら2つの下位システムを制御する中央制御部から構成されるとしています。

 

音声ループとは言語的リハーサル・ループであり、例えばインターネットで調べた電話番号を入力し終わるまで口で唱える場合などに機能するものです。

 

つまり、音声ループは認知課題の遂行中に言語的情報を保持しておく内なる耳としての機能や、言葉を話すために準備している単語を保持しておく内なる声としての機能をするものなのです。

 

これに対し、視空間スケッチパッドは内なる目に相当するものであり、野球選手がバッター・ボックスで投手のピッチング・フォームを思い浮かべてタイミングを計ったりする場合などに機能するものです。

 

音声ループや視空間スケッチパッドの特性や、それらが種々の認知課題の遂行中にどのような機能を果たしているかを調べるために、様々な実験的分析が実施されています。

 

例えば、単語を視覚的に呈示し直後に再生させると(記憶範囲の測定)、再生語数は単語の音節数の関数として減少し(語長効果)、その数は通常2秒間で読み上げることのできる数と一致することが確認されています。

 

このような実験結果から、音声ループは2秒間で音声化できる量という容量の限界があると考えられています。

 

ワーキング・メモリーについては、こころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキストである精神解剖生理学基礎の第4章で概観していますので、ご興味・ご関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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