コラム

自己と心理学の関係

2023.2.16
  • 自己評価
  • 自己効力感

心理学では「自分自身」というものをどのように研究しているのでしょうか。 

 

 

誰しも「自分自身とは?」という疑問を少なからず抱きながら生活をしているかと思います。
では、心理学において、自分というものは、どのように研究されているのでしょうか。本コラムでは「自分」というものに関わる様々な心理学の研究や理論について紹介したいと思います。
 

 

■自己評価維持モデル

 自己評価維持モデルとは、心理学者のテッサーが提唱したものです。
このモデルでは、人間はポジティブな自己評価を維持しようという動機づけが基本となっています。
そして、自己評価は自己にとって心理的に近い他者の優れた行動によって、自己評価が上がる場合(反映過程)と、自己評価が下がる場合(比較過程)があるとしています。
こうした相反する過程のいずれかが発生するには、当該活動が自己にとってどの程度の関与度を持つかによって決まってくるとされています。
自分自身の関与度が低いとき、心理的に近い他者の優れた行動は快感になりますが、関与度が高い時は自己にとって脅威と感じられます。

そのため、関与度の高い事柄で自己が心理的に近い他者よりも優れ、関与度の低い事柄では心理的に近い他者が自己よりも優れていることが、自己評価の維持につながるということになります。
自己評価の維持が困難な場合、人間は不快になり、その解消がモチベーションになります。
そして、他者との心理的な近さ、他者および自己の行動、関与度、またはこれらを組み合わせて変化させることによって、自己評価を維持しようとします。
このように、自己評価維持モデルは、人間の社会行動、他者との親密さ、自己のあり方を説明できるのです。 

 

■自己イメージバイアス

 他者を認知する際、自分が望ましいと思う特性次元の重要性を過大に評価し、望ましくないと思う特性次元の重要性を過小に評価する傾向のことを自己イメージバイアスとよびます。
このバイアスは自分の弱点が持つ意味の解釈を変化させ、全体的自己評価に大きく影響するのを防ぐとともに、得意な事柄を重要視することによって、自己の他者に対する相対的な優位性を確保できる可能性を高めようとするものです。
 

 

 

■自己効力感(セルフ・エフィカシー)

 自分自身が現状の主体(主役)であるという確信を持ちながら、様々な要素を自身でコントロールし、外的な要請にも対応できているという感覚のことを自己効力感(セルフ・エフィカシー)とよびます。
自己効力感が高ければ、多少の問題は自己解決できるし、場合によっては必要なサポートを周囲の他者に要請・承諾してもらうこともできるという認知を持つことができ、現実的な対処が可能となるとされています。
このような自己効力感の高い状態であれば、抑うつや不安などのネガティブな感情が生起することが少なく、行動面の抑制・消極化も防げると考えられます。

しかし、自己効力感が低いと、“自分には状況のコントロールが できない”、“自分は他者からの要請や期待に応えられていない”、“自分ではどうすることも出来ない無力感から、なすがままになる”というような状態になってしまいます。
このような状態では、抑うつや不安が起きやすく、積極的に活動しようとする“やる気”が起きないということになってしまいます。 

そんな自己効力感を向上させるためには、どうすればいいのでしょうか。具体的には以下のようなアプローチがあります。 

 

  1. 自身が実際に行動することで目標を達成できたという成功体験を積む
  2. 自分と状況・状態の近似した他者の成功事例の観察をする
  3. 周囲の他者からの承認や奨励を受ける
  4. 自身の生理的・認知的変化に伴うポジティブな感情の体験を積む

 

逆に言えば、自己効力感を低下させてしまうのは、前述の4つを経験する頻度が少なかったり、逆の経験(失敗体験など)をすることなどであるということになります。 

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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