心理

2019/3/4

EMDRとは?

EMDRは比較的新しい心理療法のアプローチであり、主に記憶や感情にアプローチすることで、精神疾患の治療・支援をするものです。

EMDRとは、Eye Movement Desensitization Reprocessing)の略であり、眼球運動による脱感作と再処理法と訳される心理療法の一種です。

 

EMDRは1989年にアメリカ・カリフォルニアの臨床心理学者・心理カウンセラーであるシャピロによって開発されました。

 

眼球運動は生理心理学において研究が実施されているが、認知心理学的な観点から眼球運動と記憶の処理に関連が認められていることが判明しており、これを心理カウンセリングに活用するのがEMDRです。

 

EMDRでは、処理すべき否定的記憶を事前にアセスメントし、そこに眼球運動による両側性の刺激を加えることで記憶の再処理(脱感作・肖定的認知の植え付けなど)をします。

 

アセスメントでは、否定的出来事に関連する代表的な映像(イメージ)や、 それを考えた時に出てくる否定的自己認知および置き換えたい肯定的自己認知、その信憑性、映像と否定的自己認知に伴うネガティブ感情およびその強度、さらに関連する身体感覚(ボディスキャン)についてアセスメントする。

 

まず、否定的出来事を意識させた上で、眼球運動を実施します。

 

EMDRでは、1セット約25〜30の眼球往復運動を時問にして12〜20秒程度実施します。

 

合わせて、深呼吸をしながら頭に浮かぶことをクライエントに報告してもらいます。

 

報告してもらうのは、映像・思考・身体感覚など何でも構わないと教示します。

 

そして、これまでにはなかった新たに浮かんだものに焦点を当て、続けて眼球運動による両側性刺激を与え、また深呼吸をした後に頭に浮かんだものを報告してもらいます。

 

この手続きを繰り返し、連想やイメージの広がり、想起される事柄の時代の変化などに沿って進めていきます。

 

その過程において、否定的な感情が消え(脱感作)、肯定的認知を信じられる程度が上がり(認知の植え付け)、不快な身体感覚が消失する(ボディスキャン)という変化が引き起こされます。

 

EMDRの治療・支援の効果が特に高いと評価されているのが心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。

 

EMDRは適応的な情報処理モデルという考え方を採用しています。

 

これは私たちの脳が本来備えている情報処理過程であり、否定的な記憶に何度もアクセスし、考えたり、人に聞いてもらったり、夢に見たりしながら、原因や対処を考え、徐々に冷静さを取り戻し、やがて、最初の頃ほどは気にならない状態になっていくというものです。

 

この最終的な状態が適応的解決とよばれるものであり、これが滞りなく進んでいく状態であれば、心理カウンセラーなどの専門家による介入などは必要なく、自然治癒していくものです。

 

しかし、心的外傷後ストレス障害(PTSD) のような状態では、この過程が阻害され、自身の能力では適応的解決まで進むことができません。

 

否定的な記憶に何度アクセスしても、映像・感情は出来事を経験した直後と同様に鮮明なままで、理不尽さが強く意識され、対処方法も思い浮かばず、自分を責めるような認知の歪みから抜け出せなくなってしまいます。

 

EMDRは連想が活性化され、否定的な記憶の周辺にある肯定的な記憶と結びつくことで、適応的解決に至る記憶の処理が促進されます。EMDR によって引き起こされる記憶やイメージの変容は、一様ではありませんが、記憶の周辺部分を認識できるようになる、

 

出来事を体験した段階で止まってしまった時間が再び経過し始め、出来事の全体像が見えてくるなどの変化が起こります。

 

そういった変化の中に肯定的な部分が紛れ込み、既にネガティブな出来事自体は終わっており、周囲にはネガティブな出来事を体験した際にサポートしてくれた人や、自分を心配してくれる人などを認識することができるようになります。

 

EMDRは現在、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・オーストラリア・スウェーデン・イスラエル・北アイルランドなど世界中で心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療ガイドラインにおいて、実証された妥当性のある方法として推奨されています。

 

また、日本にも国際学会から認定され、正式なEMDRのトレーニングを実施や研究活動を実施する団体として、日本EMDR学会が発足し、精力的に活動しています。

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