コラム

語彙の日と心理学の関係

2026.5.1 心理
  • 言語心理学
  • 発達心理学

トレーニングの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
 

【目次】

  1. 1.5月1日は「語彙の日」
  2. 2.言語が映す心の健康
  3. 3.AIが寄り添う対話支援
  4. 4.まとめ

 

1.5月1日は「語彙の日」

日本では365日のすべてに、何らかの記念日が制定されています。51日は「語彙の日」に制定されています。これは、実用日本語・語彙力検定を実施している株式会社旺文社・生涯学習検定センターが制定したものです。日付の由来は、「ご(5)い(1)」の語呂合わせからきています。この日は、日常生活や学習活動、仕事において書いたり、読んだり、聞いたりする言葉を的確に理解するために必要な語彙の大切さを認識してもらうことを目的としています。

同社が実施している実用日本語・語彙力検定は、日本語の語彙力を客観的に測定・評価する検定であり、ハリネズミの「ごいちゃん」が検定のキャラクターとなっています。これは、語彙の「彙」がもともとハリネズミを意味する文字であり、毛や針が体に密集している様子から「彙」には「集まる」という意味があるためです。語彙とは、多くの言葉が集まったものを指します。

では、語彙や言語と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

2.言語が映す心の健康

心理学の一分野に、言語心理学という学問があります。言語心理学は、言語学と心理学の要素を合わせ持ち、言葉やコミュニケーションを心理学的に研究する分野です。1950年代には、アメリカの言語学者チョムスキーが生成文法を提唱しました。生成文法の誕生は、「認知革命」とも呼ばれる大きなムーブメントとなりました。チョムスキーは、言語はそれを話す母語話者の心や脳の中にあると考え、人間がもつ言語能力そのものを言語学の研究対象にすべきだと主張しました。そして、1951年にアメリカのコーネル大学で開かれた言語心理学に関する夏期講座をきっかけとして、言語心理学という分野が正式に誕生しました。

その後、言語心理学は研究と発展を続けています。近年の研究では、人が話した内容やSNSに書いた文章における言葉のパターンや感情の動きを分析することで、うつ病などさまざまな精神疾患の兆候を推定できる可能性が示されています。たとえば、日常的な発言や書き込みに見られる感情の変化の仕方が、うつ病や注意欠如・多動性障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの診断と関連するという結果が報告されています。これは、言語表現の変化が心の状態を反映する可能性を示しています。言語は単なる伝達手段ではなく、心理的なバイオマーカー、すなわち心の健康を示す指標になり得るという新しい発見につながっています。

 

3.AIが寄り添う対話支援

言語に関するデータは、オンライン上に膨大な量で存在しています。そこで、大規模言語モデル(LLMs)を活用し、感情や文脈を把握しながら治療的な対話を生成する方法の研究が、言語心理学の分野で進められています。たとえば、利用者の状況や感情を理解し、それに応じて支援的な言葉を返す対話モデルについて、強化学習を用いたアプローチが提案されています。これらの研究は、専門家がすぐには対応できない状況や、24時間対応のメンタルヘルス・サポートサービスの確立と普及につながる可能性があります。

また、言語の発達という観点から、言語心理学と発達心理学の共同研究も行われています。大規模な研究の結果、子どもの頃に身につけた言葉遣い、特に言葉による否定的なコミュニケーションが、成人後のメンタルヘルスに長期的な影響を及ぼすことが報告されています。特に、不適切な言語の扱い方は、身体的な虐待と同等、あるいはそれ以上に心理的健康リスクを高める可能性が示されています。

私たち日本人は、日本語を母語とし、第二外国語として英語を学ぶことが多い傾向にあります。一方で、英語以外にも中国語や韓国語などを学んでいる人も増えています。言語心理学では、このような言語選択そのものが、心や感情の表出にどのような影響を与えるのかについても研究されています。バイリンガルの人がそれぞれの言語で気分や不安の評価を行ったところ、使用する言語によって報告される不安や抑うつの強さが異なるという結果が示されています。これは、言語の背後にある文化的背景や意味の枠組みが、感情表現や主観的体験に影響を与えることを示しています。つまり、同じ感情であっても、用いる言語によって感じ方が変わる可能性があるということです。

 

4.まとめ

心理学や精神医学における「言葉遣い」についても注目が集まっています。たとえば、「病気」や「障害」といった否定的な語の使用が減少し、代わりに「メンタルヘルス」や「ウェルビーイング」といった語へとシフトしつつあります。この言葉の変化自体が、心の健康に対する社会的理解を反映し、またそれを促進するという見方もあります。

このように、言語心理学では、さまざまな角度から言葉や語彙についての研究が進められています。

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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