コラム

感情心理学とは

2026.8.24 心理
  • 感情心理学
  • こころ検定(R)

 【目次】

  1. 1.「感情」という言葉の定義と学術用語
  2. 2.感情研究の源流と諸理論の展開
  3. 3.認知と感情、そして行動へのプロセス
  4. 4.日本人に特有の感情のかたち(2026/08/24)

 

1.emotionをどう訳すか

一言で「感情」といっても、日本語も外国語も、実は関連する用語が多種多様です。感情をどの範囲に規定するか、また用語をどのように用いるかによって、ニュアンスが異なるものとなっています。

たとえば英語では「emotion」という用語が一般的に用いられますが、「affect」という言葉もあり、「emotion」の上位概念が「affect」であると見なす場合があります。

日本では、「emotion」における動的な側面を強調する場合は「情緒」や「情動」と訳し、「feeling」を「感情」と訳すことが一般的でした。

1992年に発足した日本感情心理学会では、「感情=emotion」を学術用語として使用すると定義しています。

ただし、日常用語として用いられる「感情」は、感情の意識化された主観的成分を強調して用いられる場合が多く、emotionというよりもaffectaffection)やfeelingといった英語に近い意味で用いられる場合が多いという違いがあります。

なお、日本には日本感情心理学会という学術学会があります。

2.ダーウィンが開いた感情研究

感情の心理学的研究の先駆けとなったのは、ダーウィンの『人及び動物の表情について』という著作であるとされています。

ダーウィンは、感情は進化の長い淘汰の産物であり、人間を含む動物は系統発生的に連続した、感情に固有の身体反応・生理反応を持つと考えました。

このダーウィンの考え方に影響を受けた理論・仮説として、心理学者のジェームズが中心となって提唱した感情の末梢説(ジェームズ=ランゲ説)、心理学者のキャノンが中心となって提唱した感情の中枢説(キャノン=バード説)、ジグムント・フロイトが提唱したヒステリーを感情の力動的特性から説明する理論などがあります。

その後、ダーウィンやジェームズらの影響を受け、心理学者のトムキンスは、人間の表情と感情に関する理論である顔面フィードバック仮説を提唱しました。

また、トムキンスの弟子である心理学者のイザードは感情の心理進化説を提唱し、心理学者のエクマンは感情の文化説を提唱しています。

さらに、より積極的・具体的に感情を進化論から考えた専門家としては、心理学者のプルチックが有名です。

これらの感情に関する理論が発展していった背景には、世代や人種、国や文化を超えて、ある程度共通するものとしての「基本感情」があるということが、研究によって判明したことが大きな要因です。

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3.感情は認知から生まれる

心理学の中で認知心理学の分野が発展する中で、感情の研究は認知との関係から進められていくことになりました。

心理学者のシャクターが提唱した認知説の影響を受けた心理学者のアーノルドは、感情の出現に先行する事態評価の重要性を指摘しました。

同様に心理学者のラザラスは、事態評価を、個体の健康的生存の可能性に関する一次評価と、対処可能性に関する二次評価の部分に分けて論じました。

これらは、感情は感覚刺激によって直接に喚起されるものではなく、事態の評価という認知過程を経た後に出現するという考えに基づいています。

私たちは何かしらの出来事を知覚(見聞き)し、その出来事について評価(自分にとって都合が良い・都合が悪い)します。そして、都合が良ければポジティブな感情、都合が悪ければネガティブな感情が発生します。

つまり、突然、感情だけがフッと湧き出すということはまずなく、何らかの出来事とそれに対する認知というプロセスが、感情の発生にとって欠かせないものであるということになります。

出来事・認知は「感情が発生する前」に関する事柄ですが、「感情が発生した後」の事柄も重要です。特定の感情が特定の行動を発生させることがあります。

たとえば、怒りの感情は攻撃行動と関連が強く、恐怖の感情は逃避行動を引き起こすことが多いものです。

知覚(出来事)・認知(評価)・感情・行動というプロセスは、基礎心理学においても重要ですが、臨床心理学でも重要な要素となっています。出来事・認知・感情、そして行動という心理的なプロセスは、現在の心理カウンセリングで主流となっている認知行動療法においても活用されています。

4.空気を読む心の科学

日本における感情心理学の研究には、独特の要素があります。最新の研究では、日本人は感情を抑制しているのではなく、対人関係を維持するための高度な感情調整をしているということが判明しています。

その代表的な特徴として、日本人は「空気を読む」ということをよく行うといわれています。この「空気を読む」とは、心理学的には文脈依存的感情理解、非言語的感情認知、対人的感情調整という側面を含んでいます。日常生活における「空気を読む」という行為は、相手の感情を先回りして調整し、場の雰囲気を壊さず、感情衝突を避けることにつながります。したがって、「空気を読む」という行為は、自分の感情を調整することと合わせて、他者の感情を調整する機能も持っているということになります。

怒りの感情についても、日本では独特な要素があることが判明しています。日本では怒りの感情を抑え、遠回しに示すため、間接的になり、空気の悪化として周囲に伝わることが多いです。また、怒りそのものを減らそうとしたり、他人の怒りも鎮めようとしたりする傾向が強く、怒りの感情を正当化することよりも、関係維持を優先しているわけです。

さらに、パーソナリティ心理学とも関係が深い「甘え」という概念についても、日本人特有の傾向として研究が進められています。最新の研究では、「甘え」という概念は、愛着理論や感情依存、対人的な安心感、関係性維持との関連において再検討されています。その結果、日本人は単に自立を重視するだけでなく、適切な依存を重視することが示されています。

・初回投稿:2018年12月27日 

・リライト及び新規追加:2026年8月24日   

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著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

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