コラム

ダーク・トライアドとは <26/7リライト>

2026.7.16
  • 精神分析学
  • 犯罪心理学

【目次】

  1. 1.犯罪心理学が解く”闇の性格”
  2. 2.操作・誇大・冷酷の三重奏
  3. 3.交渉力を生む黒い性格
  4. 4.他人の痛みに、脳は反応しない。ダークパーソナリティの正体(2026/07/16)

 

1.犯罪心理学が解く”闇の性格”

ダーク・トライアドとは、問題行動などの背景となるパーソナリティ特徴であり、犯罪心理学や臨床心理学において研究されているものです。

反社会的行動や犯罪行動を起こしやすい傾向を持つ人が、少なからず存在していることが知られています。

しかし、多くの人が法律を守り、平和に生活している中で、なぜ、反社会的・犯罪的な行動を実行してしまう人がいるのでしょうか。

このような問題について、心理学では、犯罪心理学および臨床心理学の観点から研究が進められています。

最近、反社会的傾向や犯罪的傾向に関するパーソナリティ研究において、ダーク・トライアドという概念が注目を集めています。

「トライアド」とは3つの特徴が相互作用を及ぼすという意味であり、三角形(三つ組み)の関係で示されるものです。

つまり、ダーク・トライアドとは、反社会的・犯罪的など「悪い」「黒い」とされる行動傾向の背景にある三つ組みのパーソナリティ特性ということです。

2.操作・誇大・冷酷の三重奏

ダーク・トライアドを構成するのは、マキャベリアニズム・ナルシシズム・サイコパシーの3つです。

マキャベリアニズムとは、イタリアの政治思想家であるマキャベリが著書『君主論』や『政略論』などの中で提示したものです。これは、目標達成のためには冷淡な手段を使うことも辞さず、嘘も方便と考え、理想よりも現実の利益を重視するなどの側面のことであり、皇帝や王などの君主(政治的指導者)には、この傾向が必要な要素であるとされています。

後にクリスティーとガイスは、こうしたマキャベリの思想に共鳴する人々がいることに注目し、これを対人行動に影響を及ぼす重要な個人差変数の1つとして捉えました。そして、これをマキャベリアニズム(マキャベリ主義)と名付け、個人差を測定するためのマキャベリアニズム尺度を開発しました(現在はMachⅣが最もよく用いられています)

マキャベリアニズム尺度は20項目からなるリッカート尺度で、他者を操作する戦術(嘘やお世辞など)に対する肯定的態度、シニカルな人間観、伝統的な道徳性の軽視などの側面が測定されます。従って、マキャベリアニズムの特徴は、対人操作・搾取・道徳観に対する冷笑的無視・自己中心・欺瞞・超合理的思考に基づく行動などとなります。

ナルシシズムとは自己愛性傾向のことです。語源は、湖面に映った自分の姿に恋したギリシア神話のナルシスに由来しています。

精神分析学では、リビドーを自己に充当することを意味しており、フロイトによれば誕生直後の自他の区別が未分化な時期にはリビドーは基本的に自己に向けられるものの(一次的自己愛)、発達後に本来は他者に向けられるべきリビドーが自己へ充当されることがあり、後者を一般に自己愛(二次的自己愛)とよびました。

つまり、成長・発達の過程において他者に向けられるようになる愛情や愛着が、自分自身にだけ向いているような状態がナルシシズムであり、誇大性・高い自尊心・エゴイズム・共感の欠如などの特徴があります。

サイコパシーは精神病質と訳されるものであり、歴史的にいくつかの意味が変遷してきています。たとえば、精神疾患の病前性格という意味、精神疾患と健常な精神状態との中間という意味などです。

また、シュナイダーは、平均的像という意味で定義される正常なパーソナリティからの逸脱状態であり、そのパーソナリティのために本人または社会が悩むものをサイコパシーと定義しており、現在はこのシュナイダーの定義がサイコパシーの広義の意味として広まっています。

サイコパシーの特徴は、継続的な反社会的行動・衝動性・利己主義・無反省などです。

 

 

3.交渉力を生む黒い性格

ダーク・トライアドは反社会的行動や犯罪行動の要因として考えられている一方で、その特徴はパーソナリティ心理学や社会心理学、産業・組織心理学の観点からも検討されています。

たとえば、ダーク・トライアド傾向を持つ人は、交渉場面でのパフォーマンスが高く、ストレス耐性が高く、責任感の伴う仕事を好む傾向があることが知られています。

また、ナルシシズム傾向を持つ人は、そうでない人と比較すると給与が高く、職場満足度が高いことも判明しています。

一方で、サイコパシー傾向を持つ人は、そうでない人と比較すると、職場での非生産的行為の多さ、職場満足度の低さ、給与の低さが認められています。

4.他人の痛みに、脳は反応しない。ダークパーソナリティの正体(2026/07/16)

最新の研究において、ダークトライアドを構成する3つの要素には共通の核となる「ダーク・コア」という概念があるとされています。ダーク・コアとは、他者の不利益を気にしない傾向、自己利益を最大化する傾向、道徳的抑制の弱さという3つの傾向から構成されており、どれだけ他人を犠牲にしてでも自分を優先するかという要素です。また、この共通因子の上に、サイコパシーには冷酷さ、ナルシシズムには誇大性、マキャベリアニズムには操作性という要素が上乗せされているというのが、より最新のダークトライアドの構造であると考えられています。さらに、脳神経科学的な知見として、他者の苦痛に対する脳の反応が弱く、自己利益に伴う報酬には強く反応する傾向が、ダークトライアドに特有の特徴であると考えられています。

さらに、ダークトライアドのポジティブな側面についても研究が進んでいます。たとえば、リーダーシップや交渉事、戦略的な行動、高ストレス状況での意思決定などにおいては、ダークトライアド特性がむしろ適応的に働くとされています。ただし、人間関係の破綻や長期的な信頼の欠如、メンタルヘルス上の問題を抱えるといった負の側面も多く報告されており、うまく立ち回れる一方で、対人関係や社会性、精神衛生の観点では良い面ばかりではないことも判明しています。

 

・初回投稿:2019年11月26日 

・リライト及び新規追加:2026年7月16日 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連記事