コラム

来談者療法(クライエント中心療法)とは

2018.9.7
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心理療法・心理カウンセリングの一種に来談者中心療法というものがあります。
別名、クライエント中心療法、または非指示的療法ともよばれることがあります。
いずれの名称も「クライエント(患者)が中心であり、カウンセラーは脇役として、指示やアドバイスを積極的にするものではない」という意味合いが強いものです。
従って、来談者中心療法は傾聴を重視し、カウンセラーは「聞き役」に徹するということになります。

 

 

来談者中心療法とは、カール・ロジャーズにより創始された心理療法であり、成立初期の1940年代に既に非指示的療法とよばれていました。
これは当時としては“非指示”という手法が珍しい手法であり、それまでの主流かつ伝統的な手法が“指示的”であったからです。

 

また、指示・非指示とは少し異なるアプローチ手法として“解釈的”な心理療法もあり、その代表が精神分析療法でした。
指示的な療法とは、カウンセラーが具体的な指示・アドバイスを積極的に与えるものであり、クライエントの話に耳を貸さないわけではないですが、会話量や会話の主体はカウンセラー側に比重があるものです。

 

また、精神分析療法も無意識や抑圧という観点から、クライエントの述べることの“裏”にある部分を解釈し、その解釈に基づいて最終的にはカウンセラーからの指示・アドバイスという流れがありました。

 

非指示的療法というネーミングでスタートしたものの、ロジャーズ自身は1951年に、自身の立場をクライエント(来談者)中心療法と名づけました。
ロジャーズは、問題は何か、どう解決したら良いかについて最も良く知っているのはクライエント自身であると考えました。

 

従って、心理カウンセラーはクライエントに何かを教える必要はないとしています。
心理カウンセラーは、クライエントの体験に心を寄せ、その体験を尊重することが重要であると述べています。

 

このような「クライエント中心」の態度によって、クライエントは本来の力を十分に発揮し、問題を解決していくと考えたわけです。
その後、ロジャーズは一般の人々の自己成長を目的としたエンカウンター・グループに力を注ぎ、1974年には、それまでの全ての活動をまとめて、自らの立場を人間中心のアプローチ(person-centered approach)と改めました。

 

 

ロジャーズの理論の重要な概念として、実現傾向 (actualizing tendency)というものがあります。
これは、人間(人間を含むあらゆる生物・有機体)は自らを維持し強化する方向に全能力を発展させようとする傾向があると仮定したものです。

 

ロジャーズは、外部の統制から自由になり自律性に向かう傾向が人間の本来的な部分に内在していると考えています。
この傾向の発現を促進するのが心理カウンセラーの態度であるとされています。
人間の成長を促進する心理カウンセラーの態度条件として、

 

①共感的理解
②無条件の肯定
③純粋性(役割行動や防衛的態度をとらず、自身の感情とその表現が一致していること)

 

が挙げられます。
この3つは来談者中心療法における基本的態度として明確化されています。
これらの基本的態度を心理カウンセラーが示すことで、以下のような変化が発生すると考えられています。

 

(1)自己を脅かす現実を自己を守るために歪曲して認知することをやめ、あるがままの状況を正確に受け取ることができるようになる。

(2)自己に問いかけ、個々の選択を決定し、その決定をした自己を信頼することができるようになる。

(3)理想を手にするよりも、そのプロセスにあることに満足する、という成長が認められるようになる。

 

ロジャーズは、このように有機体としての人間が最高に実現された状態を「十分に機能する人間」とよび、この状態を目指すことが重要であるとしています。

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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