コラム

家族と終活を話し合う日と心理学の関係

2025.9.18 心理
  • 発達心理学
  • こころ検定1級

家族と終活を話し合う日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

 

【目次】

  1. 1.9月20日は「家族と終活を話し合う日」
  2. 2.老年期にも、心は成長する
  3. 3.老年期の心理が、人生の最終章を豊かにする
  4. 4.まとめ

 

1.9月20日は「家族と終活を話し合う日」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。9月20日は「家族と終活を話し合う日」に制定されています。これは葬儀・墓地・終活事業などを手がける株式会社ニチリョクが制定したものです。日付の由来はこの世とあの世がもっとも近くなるといわれる「彼岸」の時期は家族がお墓参りなどで集まる機会であり「終活」についても話しやすいという考えから、春と秋の「彼岸の入りの日」としたものです。人生の終わりに向けて準備をする「終活」について、個人で考え仕舞い込むのではなく、家族や大切な人へ伝えたり、話し合う日とするのが目的。記念日の制定を記念して「終活」をテーマにした「家族と終活を話し合う日」制定記念セミナーが実施されたり、家族で終活の話をするきっかけや親子が終活について話すべきタイミング、伝わる話し方などについて講演が実施されています。

 

では、終活と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

 

2.老年期にも、心は成長する

心理学において、発達心理学の中の1つの領域として、老年心理学があります。これは老年期(通常は65歳以上の年齢層)の人々を対象に老化の様相や特性、その心理的適応(主にサクセスフル・エイジング)等を明らかにすることを目的とした心理学の分野です。老年心理学は他の心理学分野よりも学問としての歴史はまだ浅いです。老年心理学の先駆けとなったのは心理学者のホールやビューラーであり、さらに1950~60年代になると心理学者のビレンやウェルフォードらが高齢者特有の問題よりも、加齢プロセス(知能の加齢低下や精神作業や職能の加齢変化など)の研究に着手しました。これが老年心理学の発展に大きく寄与し、老年期のポジティブな要素に注目するきっかけとなりました。現在、老年心理学は老年医学や老年社会学とともに国際老年学会の一分野に取り入れられています。なお、日本では1970年代頃から平均寿命の伸長が社会的な問題となったことがきっかけで高齢者の心理的過程の解明が重要な問題となりました。そこで、海外からは少し遅れる形で日本でも本格的な老年心理学研究が開始されることになりました。

 

3.老年期の心理が、人生の最終章を豊かにする

老年心理学は特に心理面・精神面における老化の影響について研究していますが、その過程で老年期のポジティブな要素を明らかにしています。そして、これが終活を明瞭な精神状態で実施できるかどうか、もしくは、そもそも終活という活動自体を積極的に実施することができるかということとも関連していると考えられます。
終活とは人生の最後である「死」について準備をするというニュアンスがあります。心理学ではエリザベス・キューブラー・ロスが提唱した死の受容の5段階という理論があります。この理論は人が死に直面した際に経験する心理的な変化を5段階で解説したものです。死の受容の5段階は具体的に、以下のような流れになります。

  1. 否認と孤立:

 

死の宣告や現実を一時的に受け入れられない状態であり「まさか自分が…」という ショックや麻痺状態の段階。孤立感を強め、周囲との接触を避けることもある。

 

  1. 怒り:

 

死の現実を認識し始め、不公平感や怒りが湧き上がる段階であり、怒りの矛先が医療従事者や家族、場合によっては自分自身に向かうこともある。また「なぜ私が…」という感情が強く現れることが多い。

 

  1. 取り引き:

 

死を遅らせたり、条件付きで受け入れたりしようとする段階。神仏に祈ったり、何かを犠牲にすることで取引しようとし、もう少しだけ生きたいという切実な状態。

 

  1. 抑うつ:

 

死の不可避性を強く認識し、喪失感や絶望感に沈む段階。悲しみ・無力感・意欲の低下などが発生し、悲嘆が深まり、心身ともに消耗する状態。

 

  1. 受容:

 

死を静かに受け入れ、穏やかな心境に至る段階。恐怖や不安は和らぎ、死を自然なものとして捉えられるようになる。残された時間を大切に過ごそうとする。

4.まとめ

このように、心理学では終活と関連の深い老年期の心理や死のプロセスについて、様々な角度から研究が実施されています。

 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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