「マイクロカウンセリング」という言葉を聞いたことがあるという方は、あまり多くないかもしれません。今回は、マイクロカウンセリングの概要について、解説していきたいと思います。
【目次】
マイクロカウンセリングとは、アメリカの心理学者であるアイヴィによって開発された初心者向けの心理カウンセリング訓練プログラムです。心理カウンセリングには様々な療法・技法があります。また、どのようにカウンセリングを進めていくのかということも、クライエントがどのような状態なのかによって千差万別です。そのため、ゼロから心理カウンセリングについて学ぶ場合、どのように勉強して技能を身につければいいのか分からないということがあります。
マイクロカウンセリングの“マイクロ”とは“微小な”とか“小さい”という意味であり、広範な内容を含む心理カウンセリングの技能を細分化して、1つずつスモール・ステップで習得していくことを目的としています。マイクロカウンセリングという用語は、アイヴィらがアメリカ心理学会カウンセリング部門の機関誌「Journal of Counseling Psychology(カウンセリング心理学研究)」において、カウンセリングの具体的技法である「かかわり行動」について論じた際に使用されたのが最初です。
「かかわり行動」とは、話し手の言葉に耳を傾け、話し手を観察しながらとる行動のことであり、話し手に対して偏見をもたずに関心を態度で示し、適切に視線を合わせるなどが該当します。「かかわり行動」は心理カウンセラーとクライエントのコミュニケーションの基礎となり、特に非言語情報が重要な要素となるとされています。
「かかわり行動」と5つのキーワード
「かかわり行動」においてキーワードとなるのは、時間・空間・身体的行動・外観・音声などであり、
上記5つが話し手を理解する上で、重要な手がかりとなるのです。
アイヴィは、心理カウンセリングに関する基礎実験を繰り返す中で、カウンセリングのトレーニング時の様子をビデオで録画し、フィードバックするという方法を試みました。すると、それまで問題の多かった初心者の「かかわり行動」が見違えるように改善し、その上、改善は一時的なものではなく、全般的なコミュニケーションが変化したのです。これを契機に、マイクロカウンセリングによる訓練プログラムが確立されていきました。
また、マイクロカウンセリングに関する研究も「かかわり行動」を中心に盛んに実施され、効果量を検討した研究では、十分効果的な訓練方法であるということが認められています。
マイクロカウンセリングは、系統的に1つずつ技法を学習していくスタイルをとります。指導者は各技法について説明し、その後、ビデオ・モデルによる示範を経て、実習をおこない、フィードバックを実施するという流れになります。
習得する技法には「かかわり行動」をはじめ、
などがあり、マイクロ技法階層表に従って訓練を進めていきます。
また、これらマイクロカウンセリングの各技法の習得には、学習心理学(行動分析学)や社会心理学を専門とする心理学者のバンデューラが提唱した社会的学習理論が応用されています。社会的学習理論における観察学習やモデリングを応用することで、新人の心理カウンセラーが効率よくカウンセリングの技術を習得することができるのです。
マイクロカウンセリングは基礎心理学や実験心理学の知見を応用し、効果的に心理カウンセリングの実践的技能の教育・指導を進める手法です。難しいことを難しく教えるのではなく、どうすればより良いトレーニングが実施でき、効率的に技能の習得ができるのかということを科学的根拠に基づいて考えているという点で、マイクロカウンセリングは科学的な心理カウンセラー養成トレーニングであるといえるのではないでしょうか。
前述の通り、マイクロカウンセリングは基本的に教育的・訓練的な要素が強いものです。しかし、様々な研究・実践により、マイクロカウンセリング自体が発展・拡大をしています。その中で、より学術的なエビデンスを重視する傾向が強まっており、スキルごとの効果測定やセッション中の行動分析、アウトカムとの関連の詳細な分析が進んでいます。また、AIによる発話分析とフィードバックも進んでいます。これはAIによる自動スキル評価やチャット型カウンセリングとの比較研究などです。
そして、コロナ以降、非言語情報が制限され、沈黙の意味が変わり、視線・うなずきの役割が変化しているのではないかという観点から、オンライン用マイクロカウンセリングという新しい領域が発展しています。
さらに、現場での実践についても発展が進んでいます。これまでは個別の技法を個別に練習することが主流でしたが、現在は実際のケースに即した統合的な訓練が主流となりつつあり、ロールプレイ・フィードバック・振り返りという訓練アプローチが浸透しつつあります。そして、セッションを録画して発話単位で分析したり、スキル使用頻度やスキルの質を可視化してスーパービジョンで共有したりすることで、マイクロカウンセリングの「見える化」が進められています。
また、特に医療健康や産業場面においては、5〜15分の短時間のセッションが重要となっている中で、マイクロカウンセリングも、開かれた質問・焦点化・要約を中心とした短時間支援の技術に注目が集まっています。
・初回投稿:2017年3月29日
・リライト及び新規追加:2026年7月1日
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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