心理

2023/1/19

視覚・視線の心理学

目で見ることは心理学において、どのような意味を持っているのでしょうか。 

 

私たちのモノを見る能力のことを視覚とよびます。
私たちは世界に存在する様々な情報を、目を通じて知覚しています。私たちは可視光線とよばれる領域の電磁波(約380~780nm)を視覚刺激として受けとめ、眼球から脳に情報を送っています。
私たちは目・耳・鼻・舌・皮膚などの五感の中でも、特に目・視覚に頼っている部分があります。
これは、視覚優位とよばれるものであり、視覚と他の感覚で得られた情報の間に矛盾がある場合、最終的な知覚は視覚情報に基づいて決まることが多いのです。

たとえば、インターネットで動画を見ているとしましょう。
この際、ディスプレイが前にあって映像が流れており、音を出すスピーカーが横にあったとしても、音は正面のディスプレイから聞こえてくるように感じるはずです。
これは、視覚と聴覚に同時に情報が流れてくると、視覚の方が優先されるということを示すものです。 

 

私たちは目で見たものを瞬時に記憶することができます。
これは、視覚情報保存
visual information storage VIS)やアイコニックメモリーとよばれるものです。
これは、心理学者のスパーリングが実験によって明らかにしたものです。
実験の結果、特定の事物が提示修了直後に約75%の内容を覚えていることができるということが判明しました。

たとえば、12文字の意味のない言葉を見せられたとします。「ヌソハラヘケアヒカセタト」という意味のない言葉を見せられ、すぐにそれを隠されたとしましょう。
そして、直後に「さき見た言葉が何だったか、答えてください」といわれると、約75%、たとえば「ヌソハラヘケアヒカ」までは正しく解答できるということです。
しかし、直後に聞かれると約75%だったものが、1秒程度、時間を空けてから解答させると、約37.5%まで覚えていられる内容が減少してしまうことが判明しています。
スパーリングの後に視覚と記憶の関係について研究したナイサーは、視覚に関する記憶能力のことをアイコニックメモリーと名付け、現在ではそちらの用語が広く使われています。 

 

対人コミュニケーションにおいて、私たちは他人の視線を非常に気にします。「目は口ほどにものを言う」という諺があるように、視線は非言語的なコミュニケーション方法なのです。 

 全く知らない他人の赤ちゃんが母親に抱っこされている際、なぜか、赤ちゃんが自分の方を見つめているように感じることはないでしょうか。

発達心理学における実験の結果、乳幼児の段階で既に人間は他者の視線に敏感に反応することが判明しています。
ただし、赤ちゃんはまだ視力自体は高くなく、生後6か月の段階では両目とも0.2程度の視力しかありません。
それでも、赤ちゃんは他人の目が「こっちを向いているのか?、それともあっちを向いているのか?」をしっかりと判別することができます。
そして、前述したように目で見た情報は脳で処理されるわけですが、乳幼児においてもそれは同じで、他人の視線がどこを向いているのかによって、脳の活動も異なるということも判明しています。 

 

私たちは他人が今、どんな気持ちなのかについて常に敏感です。
そのため、私たちの脳は特に他人の顔・表情に特別に反応するという機能を持っています。
そして、顔・表情の中でも特に視線に対して敏感に反応し、他人の感情を読み取ることができるということが判明しています。

逆に言えば、視線を正確に認識できないと、私たちは他人の感情を正確に読み取ることができなくなるのです。
知覚心理学・認知心理学の研究の結果、他人の感情を把握する機能を持つ脳部位に損傷を負っている人は、他者の視線に注意を向けることができず、他人の感情を上手く捉えることができません。
しかし、脳損傷を負っている人に、予め「他人の目・視線にだけ注目してください」と教示しておくことで、健常者と同じレベルまで他人の感情の推測が正確になることが判明しています。
逆に言えば、健康な人は特に注意を集中することなく、常に他人の視線に自動的に意識を向けているということになります。 

 

視覚を含む、知覚に関する心理学については、こころ検定4級の第4章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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