心理

2019/9/3

ストレスとは

ストレスという言葉自体はよく耳にしますが、では心理学では専門的な観点からストレスをどのように捉えているのでしょうか。

ストレスの原因となるものはストレッサー、ストレッサーへの抵抗から身体・心に現れるものをストレス反応とよびます。

 

人間の精神状態はゴムボールに例えることができます。

 

ストレスの無い状態では凹みや歪みの少ない球体ですが、ストレッサーが出現することによって、圧力を受けた分が凹んだり歪んだりします。

 

しかし、人間の精神はゴムボールのように弾力性があるので、ストレスの無い状態に戻ろうとする機能があります。

 

このストレッサーに抵抗して元の安定した状態に戻ろうとする作用をストレス反応とよびます。

 

ストレスに関する研究者の代表的な1人として、生理学者のハンス・セリエがいます。

 

セリエはストレスの原因となるストレッサーを物理的ストレッサー、化学的ストレッサー、生物的ストレッサー、心理的ストレッサーの4つに分類し、これらの様々なストレッサーに対して人間を含む全ての生物は適応しようと試み、安定した状態を保とうとすると考えました。

 

また、セリエはストレッサーに対する反応には警告期、抵抗期、疲憊期という3段階があると述べています。

 

ストレッサーが出現することによって、一時的に抵抗力が低下する段階を警告期、その後、ストレッサーに対して身体が適応しようとして抵抗力が上がる段階を抵抗期、さらにストレッサーが長期間継続し、身体が限界に達して再び抵抗力が低下する段階を疲憊期としています。

 

セリエはストレッサーがどのようなものであっても、人間の生理的機能は警告期、抵抗期、疲憊期という順に段階を経て変化するとし、これを汎適応症候群とよびました。

 

汎適応症候群そのものは病気ではありませんが、この状態が長期間続く(疲憊期が長期間継続する)と、身体の抵抗力が低下し続け、病気のリスクが高まり、様々な疾患が発症すると考えられます。

 

ストレス反応の結果が胃に強く影響した人は胃潰瘍となる可能性があり、呼吸器系(肺など)に強く影響した人は過換気症候群となる可能性があります。

 

そして、最新の心理学研究の結果、ストレスの影響は人間の考え方や物事の決め方などの認知機能にも影響を及ぼすことが判明しています。

 

慢性的なストレスやうつ病などによって、物事を決めるのに時間がかかり、間違った選択や決定をしてしまうことが増えることが判明しています。

 

そして、それが新たなストレスとなるという悪循環を引き起こすわけです。さらなる研究の結果、慢性的ではなく、短期的なストレッサーであっても、その影響からリスキーな選択をしてしまう傾向が強くなることも判明しています。

 

ストレスと意思決定に関しては、非常に興味深い研究がいくつかあります。

 

たとえば、意思決定・選択行動をする前に4℃の冷水に両手を2分間つけるという作業を実施します。

 

一見、手が冷たくなるだけで、それ以上の意味はないように感じるかもしれません。

 

しかし、温冷刺激はストレスとなるため、この「冷水に手をつける」ということ自体がストレッサーになります。

 

ただし、冷水に手をつけるというような事柄は、日常生活でも発生することがあるものなので、これのせいで体調が悪くなったり、不安や恐怖を感じるような強いストレッサーとはなりません。

 

しかし、このような些細なストレスでも、私たちの意思決定や選択行動には影響が出てしまうのです。

 

実験で4℃の冷水に両手を2分間つけた参加者は、その直後に実施した意思決定課題において、よりリスクの高い選択肢を選択する傾向が強いことが判明しました。

 

暗算課題などのように「頭を使って考える課題をやって、頭が疲れた」という状態になるのであれば、その後の意思決定に何らかの悪影響が出るのは、ある程度、納得できるかと思います。

 

しかし、冷水に手をつけるという行動は、頭を使って何かを考えるようなものではないので、なぜ、それが意思決定に影響を及ぼしてしまうのかは不思議に感じる方も多いのではないでしょうか。

 

これは、身体感覚に関する情報は自律神経を通じて脳に送られるので、それが認知機能や感情・行動に影響を及ぼすからです。

 

「冷たい」という感覚はただそれだけの情報として処理されるのではなく、自律神経による身体内部のバランスの調整が実施されます。

 

その過程で脳の活動そのものや神経伝達物質にも影響が出るため、意思決定などの認知機能にも影響が及ぶというわけです。

 

ストレスについては、心理学の様々な領域で研究が進められています。

 

こころ検定3級の第4章でストレスについて概観しています。ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

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