コラム

科学的とは、どういうことなのか?

2019.3.4 心理
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心理学は科学の一分野であり、カウンセリングも科学的根拠に基づいた対応が求められます。
では「科学的」とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

 

 

心理学は科学の一領域であり、数学や統計学の観点からデータを扱うことが多い分野です。

 

従って、心理カウンセリングも科学的根拠に基づいた「エビデンスベイスト」(根拠に基づいた)アプローチが重視されています。

 

また、心理カウンセラーの世界基準である「科学者-実践者モデル」において、心理カウンセラーは心理学者でなければならないと提唱されていることからも、メンタルへルスの専門家に科学者としての視点が求められているといえるのではないでしょうか。

 

では、より具体的に「科学的」とは、どのようなことを指すのでしょうか。

 

「科学」という言葉から「研究」や「実験」「調査」などがイメージとして浮かぶ人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、研究や実験、調査は科学的な「手法」の名称であり、「実験をしたから科学的」「調査研究をしたから科学的」ということにはなりません。

 

それには、 研究や実験で得られたデータを何らかの方法で分析することが必要であり、 分析した結果が統計的に有意であるかどうかを検討することも必要です。

 

統計的に有意とは「この結果は偶然に引き起こされたものではなく、条件Aと条件Bの違いによって引き起こされた」ということであり、偶然に引き起こされた差は「意味の無い差」であるのに対して、条件・状況の違いによって引き起こされた差は「意味のある差(有意差)」であると定義されます。

 

ただし、有意差があったから「科学的である」ということにはなりません。
有意差はデータ分析の結果の状態であり、有意差によってが「良い」「悪い」ということでもありません。

 

科学的なのかどうかを決定づけるのは、取得したデータを分析して有意差などを検討した後となります。

 

つまり、実験や調査が終わり、研究自体が一段落した後が重要だと考えます。

 

実験や調査の 結果は「誰がやっても同じ結果」になるのでしょうか。

 

これが科学にとって重要な要素である「再現性」です。

 

水が100℃になると沸騰するというのは「誰が水をやかんに入れてコンロにかけたのか」に関係なく引き起こされる現象です。

 

つまり、水の沸騰という現象は「再現性」が確実なものであり、科学的な事実であるということになります。

 

このように、科学的な事実は私たちの日常生活の様々な場面で活用されています。

 

つまり、誰がやるかによって結果が異なってしまうようなものだと、不便で利用価値がなく、不便で利用価値の低いものになってしまいます。

 

誰にでも再現できるということは、誰にでも手軽に利用可能であるということもでもあり、科学的な知見・技術にとって重要な要素でもあるのです。

 

 

■心理学における「再現性」とは

では、心理学・カウンセリング・メンタルへルスに関する研究成果について、その再現性はどのようなものなのでしょうか。

 

2015年に実施された大規模調査研究の結果、海外の主要な学術雑誌に掲載された心理学観連の研究結果について、改めて同じ方法で実験・調査をした結果、その再現率は39%であるという報告が出されました。

 

この検証結果については、その手法や検証の観点について賛否両論があるものの、39%という数値はけして高いものではないため、驚きとともに世界的なニュースとして報道されました。

 

この再現性の低さの問題には様々な要因が関係していると考えられます。

 

また、そもそも発現性(発生する頻度)の低い現象というものを取り扱っているのであれば、同時に再現性が低くなってしまうこともあるでしょう。

 

人間の認知や感情、行動を扱う心理学では、発現性の低い事象を研究対象としていることもあるため、それが再現性の低さにつながった可能性も指摘されています。

 

実際のカウンセリングの現場でも、治療・支援の効果にはバラつきがあります。

 

それは、心理カウンセラーの経験や技量や、クライエントの状態、心理療法の科学的な再現性や妥当性の問題など様々な要因が考えられます。

 

そして、「誰が実施しても同じ結果が得られる」という観点から考えた場合に、最も再現性が高い治療法は、薬物療法であると考えられています。

 

少なくとも、A医師が処方しても、B医師が処方しても、薬の効果は同じであることは明らかです(※薬の副作用やクライエントの状態によって効果が異なる可能性はありますが)。

 

そして、日本で医療保険の対象となっている認知行動療法も、一定の科学的再現性の高さが保証されていることが根拠となっています。

 

心理療法において再現性を求めることは、困難なことではありますが、心理カウンセリングにおける効果的なアプローチを考える時には、再現性の高さは重要なキーワードであると考えられるでしょう。

     

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

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