コラム

攻撃の心理学

2026.9.16 心理
  • ジグムント・フロイト
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  • 動物心理学
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【目次】

  1. 1.攻撃行動とは何か/内的衝動説
  2. 2.感情表出説
  3. 3.社会的機能説
  4. 4.攻撃性をめぐる最新研究(2026/09/16)

 

フロイトが説いた破壊の本能

攻撃という行動について、心理学では感情や行動の観点から研究が進められています。攻撃とは、心理学において「他者や他個体に対して危害を加えようと意図された行動」と定義されており、それを引き起こす心理的背景としては認知・感情・動機づけ・パーソナリティなどがあります。私たち人間や動物が攻撃行動を実施する背景理論として、内的衝動説・感情表出説・社会的機能説という3つがあります。

内的衝動説とは、攻撃を引き起こすエネルギーはその個人(個体)の内側にあるとする説で、それは攻撃本能や攻撃衝動とよばれ、他者を苦しめ、破壊を行うことによって満足と快感を得るサディスティックな欲望であるとされています。精神分析の創始者であるフロイトは、自己破壊衝動である死の本能が生の本能と妥協することによって外部に転化され、それが攻撃衝動となると述べており、人間は破壊衝動が自己に向かわないように、常にそれを外部に向けて発散しなければならないと述べています。

つまり、精神分析的には、すべての攻撃行動は何らかの欲求を転換させた結果であるということになります。また、動物心理学者(比較行動学者)のローレンツは、動物の闘争行動における生物学的機能を強調しました。そして、攻撃動機づけが攻撃本能に由来するとし、動物の脳内には攻撃行動を司る攻撃中枢が存在すると仮定しました。

さらに、内的衝動と外的刺激の2要因からなる水圧モデルを用いて、動物の攻撃反応のメカニズムを説明しようと試みています。

欲求不満が攻撃を生み出す

続いて、感情表出説ですが、これは、攻撃をネガティブな感情の表出あるいは発散と見なすものです。心理学者のダラードらは、すべての欲求不満(フラストレーション)は攻撃を動機づけ、攻撃は常に欲求不満によって喚起されるという欲求不満説を提唱しています。

つまり、欲求不満と攻撃行動は必ずセットで相互作用的に機能しているということです。この理論においては、攻撃反応の目標は欲求不満を現実的に解決することではなく、欲求不満によって生じたネガティブ感情(怒り)を発散させ、減少させることであるとしています。

さらに、新たな心理学の理論や知見を取り入れ、このアイディアを洗練させた攻撃理論がバーコウィッツによって提唱されています。バーコウィッツは、怒りや憎しみなどの敵対的感情だけではなく、抑うつや憐れみなどすべての不快な感情が攻撃動機づけを含むと仮定し、不快感情の一般的攻撃誘起性を強調しています。

さらに、攻撃動機づけに関連した認知要因として、帰属や予測といった高次の制御的過程よりも、記憶ネットワーク内の連合的覚醒伝搬など低次の自動的過程の関与を強調し、攻撃理論にプライミングなどの認知心理学的な概念の導入を試みています。これにより、攻撃は感情のさらに一つ手前の認知の影響力が強いということが判明したわけです。

 

こころ検定2級合格条件のメンタルケア心理士

 

3.攻撃は学習される行動である

3つ目の社会的機能説では、攻撃の感情的側面よりも目標志向的側面に焦点が当てられています。心理学者のバンデューラやパターソンなどの学習心理学、特に社会的学習理論の専門家は、攻撃反応の時間的変化を強化経験のパターンから予測・説明しようと試み、随伴性経験が行為に関する道具的認知を形成し、攻撃反応の制御をもたらすと述べています。彼らの攻撃理論においては、服従や承認といった対人的強化因子の役割、あるいは観察などの社会的間接経験による学習メカニズムなどが取り上げられています。

また、テダスキやルールなどの社会的認知を重視する心理学者たちは、個人の制御的認知過程に注目しています。彼らの理論では、攻撃は紛争を解決したり、事態や人間関係を変化させたりするために、個人が手段的方略として試みる行動であるとしています。攻撃によって追求される主たる社会的目標は、強制(社会的影響)、自己呈示(社会的同一性)、制裁・報復(社会的公正)、防衛であるとされています。攻撃行動には、感情や動機づけの関連が強いことが示唆されています。

感情や動機づけについては、こころ検定4級の第6章で概観していますので、興味・関心のある方は、ぜひ勉強してみていただければと思います。

孤立が過激な攻撃を招く

また、最新の心理学・精神医学の研究では、攻撃性を生み出す脳・ストレス・社会の関係について検討されています。近年の大規模調査分析の結果、身体の炎症反応や慢性的なストレスが攻撃性と深く結びついていることが確認されています。体内で何らかの炎症反応が起きている際や睡眠不足が続いている際には、脳の前頭葉の働きが著しく低下します。

その結果、攻撃的な反応が起きやすくなってしまうことが判明しています。さらに、強いストレスにさらされると、脳における情報処理で認知の偏り(ゆがみ)が生じやすくなり、これが一気に攻撃行動へと結びつくことも判明しています。

そして、社会的な問題についても研究が進められています。たとえば、政治的な暴力やSNS上での過激な攻撃性の背景には、社会的アイデンティティの脅威としての孤立感があると指摘されています。人間は本来、何らかの集団とつながりたいという欲求を持っています。しかし、社会的に孤立したり、自分の居場所が脅かされていると感じたりすると、それを生存の危機であると本能的に捉えてしまい、過激な思想や特定の敵への攻撃を通じて、間違った形で絆を取り戻そうとしてしまうことが判明しています。

孤立と同じく、被害者意識という問題も攻撃性との関連が指摘されています。特権的被害者意識という概念がありますが、これは、自分たちは常に不当に傷つけられている、という強い被害者意識を持つというものです。そして、この特権的被害者意識が高い人ほど、他者への攻撃を正当防衛や正義とみなして容赦がなくなる傾向があることが判明しています。

なお、この問題を改善・解決するため、脱過激化プログラムという治療・支援のためのプログラムの開発が進められています。

 

・初回投稿:2020年3月3日

・リライト及び新規追加:2026年9月16日

こころ検定1級合格条件のメンタルケア心理専門士

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著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

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