心理

2020/3/3

攻撃の心理学

攻撃という行動について、心理学では感情や行動の観点から研究が進められています。

攻撃とは、心理学において「他者や他個体に対して危害を加えようと意図された行動」と定義されており、それを引き起こす心理的背景としては認知・感情・動機づけ・パーソナリティなどがあります。

 

私たち人間や動物が攻撃行動を実施する背景理論として、内的衝動説・感情表出説・社会的機能説という3つがあります。

 

内的衝動説とは、攻撃を引き起こすエネルギーはその個人(個体)の内側にあり、攻撃本能や攻撃衝動とよばれ、他者を苦しめ、破壊を行うことによって満足と快感を得るサディスティックな欲望であるとされています。

 

精神分析の創始者であるフロイトは、自己破壊衝動である死の本能が生の本能と妥協することによって外部転化され、それが攻撃衝動となると述べており、人間は破壊衝動が自己に向かわないように、常にそれを外部に向けて発散しなければならないと述べています。

 

つまり、精神分析的には、全ての攻撃行動は何らかの欲求を転換させた結果であるということになります。

 

また、動物心理学者(比較行動学者)のローレンツは、動物の闘争行動における生物学的機能を強調しました。

 

そして、攻撃動機づけが攻撃本能に由来するとし、動物の脳内にはこうでき行動を司る攻撃中枢の存在を仮定しました。

 

さらに、内的衝動と外的刺激の2要因からなる水圧モデルを用いて、動物の攻撃反応のメカニズムを説明しようと試みています。

 

続いて、感情表出説ですが、これは、攻撃はネガティブな感情の表出あるいは発散と見なすものです。

 

心理学者のダラードらは、全ての欲求不満(フラストレーション)は攻撃を動機づけ、攻撃は常に欲求不満によって喚起されるという欲求不満説を提唱しています。

 

つまり、欲求不満と攻撃行動は必ずセットで相互作用的に機能しているということです。

 

この理論においては、攻撃反応の目標は欲求不満を現実的に解決することではなく、欲求不満によって生じたネガティブ感情(怒り)を発散させ、減少させることであるとしています。

 

さらに新たな心理学の理論や知見を取り入れ、このアイディアを洗練させた攻撃理論がバーコウィッツによって提唱されています。

 

バーコウィッツは怒りや憎しみなどの敵対的感情だけではなく、抑うつや憐れみなど全ての不快な感情が攻撃動機づけを含むと仮定し、不快感情の一般的攻撃誘起性を強調しています。

 

さらに、攻撃動機づけに関連した認知要因として、帰属や予測といった高次の制御的過程よりも、記憶ネットワーク内の連合的覚醒伝搬など低次の自動的過程の関与を強調し、攻撃理論にプライミングなどの認知心理学的な概念の導入を試みています。

 

これにより、攻撃は感情のさらに1つ手前の認知の影響力が強いということが判明したわけです。

 

3つ目の社会的機能説では、攻撃の感情的側面よりも目標志向的側面に焦点が当てられています。

 

心理学者のバンデューラやパターソンなどの学習心理学、特に社会的学習理論の専門家は、攻撃反応の時間的変化を強化経験のパターンから予測・説明しようと試み、随伴性経験が行為に関する道具的認知を形成し、攻撃反応の制御をもたらすと述べています。

 

彼らの攻撃理論において、服従や承認といった対人的強化因子の役割、あるいは観察などの社会的間接経験による学習メカニズムなどが取り上げられています。

 

また、テダスキやルールなどの社会的認知を重視する心理学者たちは、個人の制御的認知過程に注目しています。

 

彼らの理論では、攻撃は紛争を解決したり、事態や人間関係を変化させるために、個人が手段的方略として試みる行動であるとしています。

 

攻撃によって追求される主たる社会的目標は、強制(社会的影響)、自己呈示(社会的同一性)、制裁・報復(社会的公正)、防衛であるとされています。

 

攻撃行動には、感情や動機づけの関連が強いことが示唆されています。

 

感情や動機づけについては、こころ検定4級の第6章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

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