コラム

マイクロカウンセリングとは?

2017.3.29 心理
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マイクロカウンセリングイメージ

毎月、大学などを会場として、様々な学術学会で研究発表や講演・研修などを行う大会が開催されています。今月も複数の心理学・カウンセリング・メンタルケア関連の学術学会で大会が開催予定となっています。その中で、日本マイクロカウンセリング学会の年次大会が3月に開催されています。「マイクロカウンセリング」という言葉を聞いたことがあるという方は、あまり多くないかもしれません。今回は、マイクロカウンセリングの概要について、解説していきたいと思います。 

  

【マイクロカウンセリングは科学的?】 

マイクロカウンセリングとは、アメリカの心理学者であるアイヴィによって開発された初心者向けの心理カウンセリング訓練プログラムです。心理カウンセリングには様々な療法・技法があります。また、どのようにカウンセリングを進めていくのかということも、クライエントがどのような状態なのかによって千差万別です。そのため、ゼロから心理カウンセリングについて学ぶ場合、どのように勉強して技能を身につければいいのか分からないということがあります。 

 

 

マイクロカウンセリングの“マイクロ”とは“微小な”とか“小さい”という意味であり、広範な内容を含む心理カウンセリングの技能を細分化して、1つずつスモール・ステップで習得していくことを目的としています。マイクロカウンセリングという用語は、アイヴィらがアメリカ心理学会カウンセリング部門の機関誌「Journal of Counseling Psychology(カウンセリング心理学研究)」において、カウンセリングの具体的技法である「かかわり行動」について論じた際に使用されたのが最初です。 

 

■「かかわり行動」とは? 

「かかわり行動」とは、話しての言葉に耳を傾け、話し手を観察しながらとる行動のことであり、話し手に対して偏見をもたずに関心を態度で示し、適切に視線を合わせるなどが該当します。「かかわり行動」は心理カウンセラーとクライエントのコミュニケーションの基礎となり、特に非言語情報が重要な要素となるとされています。 

「かかわり行動」とつのキーワード 

  1. 時間 
  2. 空間 
  3. 身体的行動 
  4. 外観 
  5. 音声 

「かかわり行動」においてキーワードとなるのは、時間・空間・身体的行動・外観・音声などであり、 

上記5つがこれらが話し手を理解する上で、重要な手がかりとなるのです。 

アイヴィは、心理カウンセリングに関する基礎実験を繰り返す中で、カウンセリングのトレーニング時の様子をビデオで録画し、フィードバックするという方法を試みました。 

すると、それまで問題の多かった初心者の「かかわり行動」が見違えるように改善し、その上、改善は一時的なものではなく、全般的なコミュニケーションが変化したのです。これを契機に、マイクロカウンセリングによる訓練プログラムが確立されていきました。 

また、マイクロカウンセリングに関する研究も「かかわり行動」を中心に盛んに実施され、効果量を検討した研究では、十分効果的な訓練方法であるということが認められています。 

  

マイクロカウンセリングの学習方法 

マイクロカウンセリングは、系統的に1つずつ技法を学習していくスタイルをとります。指導者は各技法について説明し、その後、ビデオ・モデルによる示範を経て、実習をおこない、フィードバックを実施するという流れになります。 

習得する技法には「かかわり行動」をはじめ、 

 

  • 開かれた質問と閉ざされた質問
  • クライエント観察技法
  • はげまし・言い換え・要約 
  • クライエントの感情の反映 
  • 5段階の面接構造
  • 対決、
  • 積極的技法 
  • 技法の統合 
  • 個人的スタイルと理論の決定 

 

 などがあり、マイクロ技法階層表に従って訓練を進めていきます。 

また、これらマイクロカウンセリングの各技法の習得には、学習心理学(行動分析学)や社会心理学を専門とする心理学者のバンデューラが提唱した社会的学習理論が応用されています。社会的学習理論における観察学習やモデリングを応用することで、新人の心理カウンセラーが効率よくカウンセリングの技術を習得することができるのです。 

  

マイクロカウンセリングは基礎心理学や実験心理学の知見を応用し、効果的に心理カウンセリングの実践的技能の教育・指導を進める手法です。難しいことを難しく教えるのではなく、どうすればより良いトレーニングが実施でき、効率的に技能の習得ができるのかということを科学的根拠に基づいて考えているという点で、マイクロカウンセリングは科学的な心理カウンセラー養成トレーニングであるといえるのではないでしょうか。 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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