コラム

5月生まれの心理学・カウンセリング・メンタルへルスの専門家 Part4

2020.5.31
  • 学習心理学
  • こころ検定4級

心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、5月生まれの著名な先生方がいます。
クラーク・ハルは学習心理学の専門家として、新行動主義の一翼を担っています。

 

 

 

▶クラーク・ハル

クラーク・ハルは1884年5月24日生まれのアメリカの学習心理学者です。

 

ハルはアメリカのウィスコンシン大学で心理学の学位を取得しています。
そのころのハルの研究テーマは概念の獲得に関するものでした。
その後、1929年にイェール大学の人間関係学科の研究教授に着任しています。

 

ハルは学習心理学について研究をする過程で、行動主義を発展させた新行動主義の観点から様々な実験を行っています。
行動主義とは、ワトソンが提唱したものであり、従来の意識を内観するという手法ではなく、客観的に観察可能な刺激と反応の関係性に焦点を当てた行動に関する研究が心理学において必要だという考え方でした。

 

ワトソンはS-R理論で刺激と反応の関係性について論じましたが、行動のメカニズムを説明するには限界がありました。
そこで、ハルを含む複数の学習心理学者たちは媒介変数として有機体(生体)という概念を加え、S-O-R理論を提唱しました。

 

これは、ワトソンの提唱した行動主義を古典的行動主義とするのに対して、新行動主義とよばれています。
新行動主義では、行動のメカニズムに個人差などの内的要因を想定しており、認知地図や潜在学習などが代表的な理論です。

 

新行動主義において重要なのが媒介変数という考え方ですが、ヒュームやロック、カントなどのような哲学者は意識の経験を元にして知識や思考、推理によって作りあげるというボトムアップ型のアプローチで研究を進めていました。

 

しかし、ハルは彼ら哲学者たちとは方法論的に反対の立場であるアップボトム型の観点から学習について検討し、習慣という概念を設定しました。
ハルが提唱した習慣の概念には、刺激と反応の連合の強さの傾向を表す習慣強度、同一の刺激が異なった刺激 = 反応の系列を通じて同一の反応に終わる一群を指す習慣族階層、基本的には新しい行動を作り上げ、それを定着させることを目標とする習慣形成などがあります。

 

ハルは習慣についての研究をまとめ『行動の本質』という書籍を1951年に出版しています。
この中で、ハルは仮説構成体について言及しており、18の公準と12の系からなる数学的な形で学習や習慣について述べています。

 

また、特にハルは学習の理論を数学的に厳密化すること、また精神分析の諸概念を学習理論に統合することを目標としていました。
より具体的には、まず先に仮説を立て、実験による検証をする仮説演繹法を導入し、行動や学習の過程を数式で表すことを重視しました。

 

さらに、ハルは催眠に関する研究にも従事ており、その分野でも多くの功績を残しています。
催眠療法の分野で世界的な権威としてはミルトン・エリクソンが有名です。

 

ミルトン・エリクソンは、それまでの催眠療法における常識を覆し、間接暗示により様々な工夫で催眠誘導を実施しました。また、ミルトン・エリクソンは患者に対する観察が非常に細かく、目的の心理行動を出現させるために、家族の相互作用を変えるための課題や、リフレーミング、物語などを用いた様々なストラテジー的治療を工夫しました。

 

ミルトン・エリクソンによって、催眠療法は従来からの型にはまった催眠誘導や暗示技法にこだわらないものになったと言われています。実はこのミルトン・エリクソンは、ウィスコンシン大学在学中に、ハルから指導を受けています。つまり、世界的な催眠療法家の師匠がハルであり、ハル自身も天才的催眠療法家として有名なのです。

 

ハルが行った学習心理学の研究に関しては、こころ検定4級の第1章で概観していますので、ご興味・ご関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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