コラム

5月生まれの心理学・カウンセリング・メンタルヘルスの専門家 part2

2018.6.7 心理
  • 精神分析
  • こころ検定(R)

 

 

▶ヤコブ・レヴィ・モレノ

ヤコブ・レヴィ・モレノは1889年5月18日生まれのルーマニアの心理学者・精神分析家です。
モレノはオーストリアのウィーン大学の医学部で精神医学を学び、1917年に学位を取得しました。

 

この間、精神分析やマルクス主義などの影響を受けながら、そこから派生して「今・ここで」(here and now)という言葉に表される現在の相互作用の自発性や創造性を重視し、独自の人間理解のための方法を模索し続けました。

 

これは、精神分析が主に過去や無意識を取り扱うことを重視するものであるということから、さらに1歩先へと踏み出しているという点で、1900年代初頭としては非常に先進的であるといえるでしょう。

 

1923年にモレノは自身の考えを『即興劇場』(Stegreiftheater)という著作にまとめましたが、やはり時代的に先進的過ぎたためか、当時は受け入れられませんでした。
さらに、ヨーロッパでナチス政権が台頭してきたことと、モレノ自身がユダヤ人であったことから、迫害から逃れるために1925年にアメリカに移住しました。

 

アメリカに移住後、いくつかの病院や学校などで役割演技法やサイコドラマ(心理劇)の実践的活動を続けました。
これらの精力的な活動の継続と、1934年に出版された『誰が生き残るか』という著書の中で提唱したソシオメトリーの理論体系が高く評価され、1936年にはニューヨーク州ビーコンに劇場・学校・病院という3つの機能を合わせ持った施設が開設しました。

 

また、1937年には ソシオメトリー(Sociometry)という学術雑誌も創刊されるに至りました。
この雑誌は1956年にアメリカ社会学会に移管された後、1979年からは Social Psychology Quarterlyと改題され、今日まで発刊が継続されています。

 

モレノの理論体系は独自の概念を用いた壮大なものではありますが、現在は理論そのものよりも、ソシオメトリック・テストや役割演技など技法的な部分を中心とした研究の発展が進められています。

 

▶ロバート・マーンズ・ヤーキーズ

ロバート・マーンズ・ヤーキーズは1876年5月26日・アメリカ生まれの心理学者・霊長類学者です。
ヤーキーズはアメリカの比較心理学の発展に貢献した中心的人物として非常に有名です。

 

比較心理学とは、動物と人間の知覚・認知・行動などの類似点・相違点を比較することを目的とした心理学分野であり、単純に心理学だけではなく、生物学や行動学などの学際的な要素が絡んだ分野でもあります。

 

ヤーキーズは1924から1944年にイェール大学で教授を務めました。
ヤーキーズは無脊椎動物から脊椎動物まで、非常に広範な動物および人間を対象に知能を中心として知覚・学習など幅広い分野の研究を実施しました。

 

特にヤーキーズは霊長類の行動研究の意義に早くから着目しており、1929年にはフロリダ州オレンジパークにイェール霊長類研究所(Yale Laboratories of Primate Biology)を設立しました(後にこの施設はジョージア州アトランタにてヤーキーズ霊長類研究所と改名され現も研究活動の拠点となっています)。

 

また、ヤーキーズはフィールド研究として、類人猿の野外調査を企画し、1931年にニッセンをチンパンジーの調査に、1932年にはビンガムをマウンテンゴリラの調査にアフリカへ派遣しました。
さらに、ヤーキーズは第一次世界大戦中には、陸軍アルファ(Army Alpha ・ アルファ検査)とよばれる新兵に対する大規模な心理テスト・プログラムの立案・施行に貢献しています。

 

心理学の分野でヤーキーズの名前が知られている理由として大きいのは、やはり、ヤーキーズ・ドッドソンの法則ではないでしょうか。
この法則は、ヤーキーズとドッドソンがネズミを使った学習実験から、覚醒レベルと学習のパフォーマンスとの間には逆U字型の関係があることを見出したことから明らかとなったものです。
ある水準までは覚醒の増加とともにパフォーマンスは良くなりますが、最適水準を超えると逆に低下していくというものであり、動物のみならず人間においてもストレスと知覚や記憶のパフォーマンスとの間にこの法則が成立すると考えられるようになりました。

 

現在でも、ヤーキーズ・ドッドソンの法則はストレスが人間の心理的過程に及ぼす影響を考える上で、重要な示唆を与えるものとなっています。

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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