コラム

3月生まれの心理学・カウンセリング・メンタルへルスの専門家 Part4

2020.3.31 心理
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心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、3月生まれの著名な先生方がいます。
レイモンド・キャッテルは知能の研究と因子分析の研究で有名です。

 

 

 

▶レイモンド・キャッテル

レイモンド・キャッテルは1905年イギリス生まれの心理学者です。

 

キャッテルは、1929年にイギリスのロンドン大学で心理学の博士号を取得した後、エクセター大学で心理学教育に従事しました。

 

そして、1937年からはアメリカに渡り、クラーク大学とハーバード大学で教えました。

 

また、1945年にはイリノイ大学の教授に就任し、さらには1978年からハワイ大学の教授を務めました。

 

キャッテルの業績の1つに知能に関する研究があります。

 

それまでの知能に関する見解としては、知能は様々な側面があるものの、1つのまとまったものとして考えられていました。

 

キャッテルはそこに、変化しやすい部分と変化しにくい部分という2つに分けるという分類を考案しました。

 

変化しやすい部分は流動性知能とよばれ、新しい場面への適応を必要とする際に働く能力であり、脳・神経や個人の生理学的・生物学的な成長・発達と関係しています。

 

たとえば、クイズのように全く知らない、これまでに勉強したことがない事柄について問題が出された際、予想や推測に基づいて問題を解くことになります。

 

このような場面において活用されるのが、流動性知能なのです。
流動性知能は遺伝によるところが大きく、20代ころまでに知能の上昇がピークを迎え、その状態が60代ころまで維持されるものの、その後、急速に低下するとされています。

 

ある程度の年齢以上になると、新しいことにチャレンジしたり、それに慣れたりするのが難しくなるのは、流動性知能の低下が原因であると考えられます。

 

変化しにくい部分の知能は結晶性知能とよばれ、学校で受けた教育や、仕事・社会生活の中で得た経験に基づいた知能です。

 

例えば、漢字の書き取りや掛け算の九九などは、誰かに教わることで身につきます。

 

しかし、一切教わる機会が無い状態で、生まれつき最初から漢字が読めたり、九九ができる人はいないわけです。

 

結晶性知能は、20代ころまで上昇し続け、スピードはゆっくりになるものの、70代まで上昇が続くとされています。

 

結晶性知能は、いわゆる“記憶”とも近いものなので、過去に知ったこと、覚えたこと、身に着けた能力であれば、ずっと使い続けることができるということを意味しています。

 

高齢者の場合、流動性知能が低下することで、新しい事柄への適応が難しくなりますが、過去に学んだり、身に着けたりしたことについては、若い頃とそれほど変わらない能力を発揮できるのです。

 

流動性知能と結晶性知能はお互いに補い合う関係です。

 

流動性知能が高いことで、新しいことにチャレンジしてもクリアすることができます。

 

そして、その新しいことも経験した後では、知識となり、結晶性知能となっていくわけです。
つまり、流動性知能が高いことが結晶性知能の高さにもつながるのです。

 

キャッテルのもう1つの重要な業績に因子分析の研究があります。

 

因子分析とは、統計分析の手法の1つであり、それぞれの項目同士の関連性を検討し、項目からクラスター(群)をまとめることができます。

 

心理学の分野では特に、心理検査などの質問紙を作成する際に因子分析を実施することが多いです。

 

新しい質問紙を開発する際、作成者は目的する状態を測定するための質問を大量に考えます。

 

そして、それを1000人以上などの多くの人に回答してもらった結果を因子分析します。

 

すると、項目同士の関連性から複数の因子が抽出されます。それは質問紙の下位項目となり、独自に合計値を出したり、レーダーチャートの1項目になったりします。

 

キャッテルが専門としていた心理学的な知能の研究については、こころ検定4級の第7章で概観していますので、興味・関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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