心理

2019/12/19

お酒と心理学

お酒には心理学的な作用があり、アルコール依存症は精神疾患の一種に分類されており、DSM-5などの診断マニュアルにも掲載されています。

お酒に関する様々な問題行動や症状を包括する疾患として、アルコール依存症があります。

 

お酒に含まれるアルコールには中枢神経に対する抑制作用があり、適度な量の摂取は問題ありませんが、適量を超える摂取によって様々な問題・症状が発生します。

 

適量を摂取した場合、アルコールはGABA受容体に作用し、不安を低下させる作用があります。

 

その結果、リラックスした気持ちになり、よくしゃべるようになったりします。

 

また、笑い上戸・泣き上戸などように、人前で笑ったり、泣いたりという思いがけない行動をとることもあります。

 

これらは全て不安という感情がアルコールによって抑制された結果であると考えられます。

 

私たちには、大なり小なり、不安という感情があります。

 

これにより、対人コミュニケーションにはある程度の慎重さが常に伴っているわけです。

 

これがアルコールの影響で低下することで、普段(素面)ではしないような、馴れ馴れしい態度や、人前ですることとしては少し過剰な「笑う」「泣く」という行動をとってしまうわけです。

 

また、お酒を飲むと眠くなってしまうという人も多いのではないでしょうか。

 

これも不安を低下させる鎮静作用の効果の1つです。特にアルコールは寝付きを良くする効果があり、眠くなってから(横になってから)、実際に入眠するまでの時間を短縮させます。

 

そのため、いわゆる「寝酒」としてアルコールを摂取する人もいます。

 

しかし、アルコールは入眠をスムーズにはしてくれるものの、就寝後に中途覚醒を発生させてしまうという両刃の剣なのです。

 

なおかつ、一度、中途覚醒してしまうと、その後は寝付けないという問題がアルコールによって引き起こされてしまうのです。

ただし、これらの行動はアルコール依存症やアルコール関連障害の症状ではありません。

 

あくまで、アルコールによる薬理作用結果であり、笑い上戸も泣き上戸も「病気」ではないわけです。

 

適量を超えると発生する症状・問題行動として、歩行困難、複視(視界がぼやける)、嘔吐、突拍子もない行動、反社会的行為、支離滅裂な発言などが挙げられます。

 

さらに多くの量を摂取してしまうと、昏睡・尿失禁・呼吸停止、果ては死亡してしまうこともあります。

 

前述のような急性のアルコール関連問題とは異なり、慢性的な過度な飲酒がもたらすのが、アルコール依存症などの各種障害です。

 

いわゆる、アルコール関連障害には、アルコールによる中毒症状によるものと、アルコール性飲料の常識的な飲み方ができなくなる心理的問題・行動的問題の2つに分けられます。

 

構造的には前者の中毒症状の影響で、心理的・行動的な問題が発生するようになるという傾向が強いです。アルコール依存症には、以下のような分類があります

 

(1) 飲酒行動の変化

 

飲酒量・酒時刻・飲酒機会に対する抑制の減弱(いつでも、どこでも飲む)

 

飲酒行動の多様性の減弱(いつものパターンで飲む、連続飲酒する)

 

負の強化に対する飲酒の反応性の変化(飲酒に起因する身体疾患や経済的困窮、社会的制裁等に対する反応性の欠如)

 

(2)主観的状態や飲酒体験の変化

 

飲酒抑制の障害ないし不能(酒が止められない)

 

渇望・飲酒中心性・強迫的飲酒欲求(飲酒への耐え難い願望、飲酒に対するとらわれ)

 

(3)精神生理学的状態の変化

 

不快感情・自律神経症状・振戦・幻覚・発作・せん妄等の離脱期の症状

 

離脱症状軽減のための飲酒、アルコール耐性の変化

 

このようなアルコール関連障害の治療・支援には、薬物療法・集団精神療法・行動療法・内観療法・家族療法・セルフヘルプ・グループを通した指導等が有効であるとされています。

 

特にアルコール依存症に関するセルフヘルプ・グループに関しては、断酒の会などの当事者コミュニティがいくつも存在します。

 

当事者同士で、他では話せないようなことを話すことで、問題の理解と改善を促進することができます。

 

アルコールが身体・精神に及ぼす影響については、主に生理心理学や精神医学の分野で研究が実施されています。

 

生理心理学・精神医学については、こころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキストである精神解剖生理学基礎の第3章・第4章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

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