心理

2019/2/1

言語心理学とは

心理学の一分野に言語心理学というものがあります。

 

言語心理学は言語学と心理学の用を合わせ持つもので、言葉やコミュニケーションを心理学的に研究する分野です。

言語に関する心理学的な研究アプローチは20世紀初頭のヨーロッパにおいてスタートしました。

 

最初期の言語心理学研究は、ヴントによって実施されました。

 

ヴントは科学的心理学の祖であり、世界で最初の心理学実験室を開設したことでも知られています。

 

そんなヴントを中心に、ドイツを中心に心理学の重要な一部門として言語心理学の研究は始まったのです。

 

より専門的には、この最初期の研究は「言語の心理学」(psychology of language)とよばれることが多くあります。

 

その後、心理学では行動主義が主流となり、対して言語学では構造主義が主流となっていきます。

 

これは心理学が「言葉を話す」という行動や、言語強化などの方向性を持っていたのに対して、言語学の構造主義とは文章の構造や文法などの方向性を持っていたということになります。

 

このような状況の中で、1950年代にアメリカの言語学者であるチョムスキーが生成文法というものと提唱しました。

 

文を「生成する」とは「定義する」という意味であり、チョムスキーは「言葉の新たな捉え方」を提唱したともいえるでしょう。

 

それまでの伝統文法とよばれる従来の文法は、文の実例を挙げ、それに注釈を加えることにより、読者の判断に頼って類似の文の文法性を類推させるということをしてきました。

 

しかし、生成文法は、明示的な規則や原理により、文法的な文と非文法的な文を原理的に区別するものとしています。

 

生成文法には、達成すべき記述能力と説明力が必要な条件として設定されています。

 

まず、ある言語の語彙からなる任意の文字列について、文法が適格文かどうか定義できる場合、その文法は「観察的妥当性」を備えた文法であるとされます。

 

次に、ある言語の適格文を定義するだけではなく、それらの文に母語話者の直感に合致した音声や構造や意味関係を与えることができる場合、その文法は「記述的妥当性」を備えた文法ということになります。

 

さらに、可能な文法の集合を定義する言語理論が、十分な制約を備え、個別言語の文法として記述的妥当性をもつ文法を選択できる場合、その理論は「説明的妥当性」を備えているとされます。

 

生成文法の誕生は「認知革命」ともよばれる、大きなムーヴメントとなりました。

 

チョムスキーは、言語はそれを話す(母語)話者の心・脳の中にあると考え、人間がもつ言語能力を言語学の研究対象にすべきだと主張しました。

 

これ以降、心理学的なアプローチを取る言語研究という意味で「心理言語学」という言い方が主流となっていきました。

 

ただし、チョムスキー自身は言語学は心理学(認知心理学)の下位部門であると言明していることもあり「言語心理学」という名称の方が適切であるという考えもあります。

 

また、言語心理学(psycholinguistics)という英語の名称が広く使用されるようになったのは、1951年にアメリカのコーネル大学で開かれた言語心理学に関する夏期講座以降がきっかけであるとされています。

 

言語心理学では、子どもはどのようにして言語を習得するのかという言語獲得に関する研究が基本として存在します。

 

これは、どのようにして言語は失われていくのかという「言語喪失」の問題と表裏一体であると考えられており、言語障害・失語症と密接に関係しています。

 

次に、人間はどのようにして言語を使用するのかという言語運用に関する研究があります。

 

これは人間がどのようにして相手が言った言葉を理解するのかという「言語理解」と人間はどのようにして相手に発する言葉を作り出していくのかという「言語産出」の2つの問題に分けて考えることができます。

 

さらに、言語の習得や使用を可能にしている言語能力の生物学的基盤に関する研究もあります。

 

この研究分野は、最近では神経言語学とよばれ、多くの研究が実施されています。

 

また、これら以外にも言語知覚や第二言語習得、バイリンガリズムなど多くの研究分野が言語心理学の中には存在しています。

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