コラム

集団精神療法とは

2018.7.2 心理
  • メンタルケア心理専門士(R)
  • 心理カウンセラー
  • こころ検定(R)
  • 心理

 

心理カウンセリングにおいて、心理カウンセラー1人に対して、クライエント1人というのが通常のセッション構造です。

しかし、場合によっては、クライエントが複数の状態でカウンセリングを実施する場合があり、これは集団心理療法または、集団精神療法とよばれます。

 

 

集団心理療法(集団精神療法)とは、治療・支援のために組織された集団の中で、治療者・支援者(心理カウンセラー)とメンバー、またはメンバーとメンバーの間の対人交流や、集団の持つ力によって、参加メンバーそれぞれのパーソナリティや行動の改善を目指すものです。

 

“集団”に対して“個人”への精神療法(一般的な心理カウンセリング)との大きな違いは、集団による療法は対人関係の障害が主な主訴となること、過去の対人関係の歪みよりも、集団のその場で(here and now)起こっていることが重視される点が挙げられます。
治療・支援の背景にある理論や技法の違いによって、精神分析的集団精神療法、話合いによる小集団および大集団精神療法、アクティビティ・グループとよばれる心理劇(サイコドラマ)、ダンス療法、音楽や絵画などの芸術療法、ゲシュタルト療法、社会的スキル訓練などがあります。(※これら全ての心理療法が“集団”にしか実施できないのではなく、個人にも適用可能です)

 

これらの集団に対する療法は適応となる対象や状態が異なるものの、共通の治療的要因として、集団に受容される体験、感情のカタルシス、ありのままの感情が受け入れられ共有され新たな適応的な感情へと変化する修正感情体験、他の参加者の気持や行動を体験し悩んでいるのは自分一人ではないことに気づく普遍化、模倣などを通じての新たな適応的な行動の学習などがあります。

 

また、狭義の集団による療法には含まれませんが、集団で実施されるレクリエーション・セラピーや作業療法、心理教育、デイケアなどでも同様の治療的要因は活用されています。
今後、我が国の精神保健政策は精神障害者を地域で支えていく方向で発展していくと考えられますが、その中で集団精神療法や各種の集団療法はますます活用されていくと思われます。

 

 

集団に対する療法の対象は、児童期・思春期の不適応、摂食障害・パーソナリティ障害・統合失調症・うつ病・アルコール依存などであり、それぞれ治療目標や用いられる技法が異なります。
標準的なケースでは、参加者は8名前後であり、週1~2回、1回あたり60~120分で実施されます。

 

ただし対象や技法によって幅があり、大集団精神療法のように数十人のグループがあり、長期入院の統合失調症の患者のグループでは1回45分程度が適当な場合もあります。
また、週3回の入院グループから、月1回の薬物治療クリニックのサポート・グループなどもあります。

 

治療目標はパーソナリティの改善といった広範なものから、退院準備、症状の軽減、生活技能や対処技能の獲得など、限定的なものまで多岐にわたります。
治療期間も対象や目標により、数セッションの短期間のものから、期間を限定しない年単位のものもあります。

 

 

集団に対する心理療法には集団行動療法というものもあります。
これは、小集団(一般的には7~8名前後)を対象として行う行動療法です。

 

行動療法は特に治療者(心理カウンセラー)とクライエントの1対1の関係が主体となることが多いものですが、治療効率や用いられる治療技法や治療の内容等によっては、むしろ小集団を対象とする治療介入の方が望ましい場合があります。

 

たとえば、対人関係の改善をめざす社会的スキル訓練、主張性訓練などはロール・プレイングなどで相手役を必要とするため、1対1では実行が難しいものです。
そこで、小集団によるアプローチが適切になるわけです。
また、小集団での治療は、他の治療参加者からの正の評価などの強化や周囲からのサポートを得る利点もあります。

 

さらに、介入による変容行動の般化促進などの面でも有利であることが判明しています。
ただし、小集団による治療が好ましいと考えられる場合も、対人関係に非常に強い不安を抱いているクライエントの場合は、集団治療の適用は難しいこともあります。
日本には、日本集団精神療法学会という学術学会があり、精力的に研究活動を実施しています。2018年度は5月に年次大会が開催されています。

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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