心理

2020/10/27

心理学における「世代」とは

心理学では、世代というものを、どのように検討しているのでしょうか?

心理学には発達心理学という分野があります。発達心理学では、生まれたばかりの時期から、75歳以上の超高齢期に至るまでの、精神の発達について検討しています。

 

そのため、胎児期や児童期、青年期、老年期などのように、年齢層別に研究が進められており、児童心理学や青年心理学、老年心理学のように一領域を形成しているケースもあります。

 

発達心理学は他の分野とも関連して研究が進められています。たとえば、児童期の子どもに関しては、教育心理学や学校心理学が重要なキーワードとなっています。小学校何年生で、どれくらいの内容を勉強するべきなのかは、発達心理学と教育心理学の研究成果が取り入れられています。

 

具体的には、発達の最近接領域という概念に合わせて「100%、手取り足取り教えてもらう必要はないが、教師等のサポートがあれば確実に習得できる」というレベルを各学年のカリキュラムに組み込んでいることなどが挙げられます。

 

また、学校におけるテストの作成も、教育心理学におけるテスト作成や成績評価という観点が取り入れられています。さらに、思春期等の発達段階特有の精神面の問題は、発達心理学や教育心理学の基礎理論を応用する形で、スクールカウンセリングや学生相談の現場で活かされています。

 

これら発達心理学の研究が多角化・細分化している背景には、世代という問題があります。たとえば、乳幼児の精神の基礎状態を理解できなければ、保育士は適切な対応ができません。

 

同様に、小学校の教師は自分よりも20歳以上も年齢の離れた児童・生徒と適切なコミュニケーションを取る必要があります。さらに、高齢者の介護福祉スタッフは自分の倍以上も年齢の離れた相手に適切な対応を実施する必要があります。

 

つまり、発達心理学の知識は異なる世代間のコミュニケーションをスムーズに進めるための重要な要素なのです。

 

世代とは、生物学的には共通の祖先に由来する同一年齢集団の子孫を指すものです。社会学的には、ライフ・スタイルや世界観、政治観、趣味などによって他と区別できる同時代人、つまり、同じ時代に出生し、同一の歴史的、社会的背景の下で、ほぼ類似の価値観や行動様式を共有する集団のことを指します。

 

2020年現在、変動の激しい社会において、価値観や行動様式が世代間や同一世代内部での下位集団間での様々な問題が顕著であることが指摘されています。つまり、発達心理学の知識が上手く活用できていないケースが増えているということです。

 

これは世代断絶とよばれる状態です。世代断絶とは、異なる世代間で価値観や行動様式の違いから来る断絶や葛藤が起こる状態です。世代間の葛藤は希少な資源(物質的な利益・権力・名声)をめぐって起こることが多いとされています。

 

世代間の不平等がこの葛藤の源泉であり、また、同一世代内部でも、ジェンダーや出身階層などの差異から断絶や葛藤が起こる場合もあります(世代内断絶)。

 

発達心理学において世代というものを考える際に非常に重要なキーワードとなるのが、コホートという概念です。コホートとは、1940年代以降に人口統計学などの分野で「一定の時期に人生における同一の重大な出来事を体験した人々」の意味で用いられるようになったものです。

 

コホートの種類には、生まれた時期、ある社会的変動の経験(例:戦争経験の有無)、ある一定の共通体験(例:就職氷河期)などがあります。人口統計学においてコホートが問題にされたのは、たとえば死亡率統計の分析をする場合、年齢効果 (例:乳児死亡率や高齢死亡率は高い)と時代効果(例:戦争や流行病があった年の死亡率は高い)だけでは説明できない現象が多く認められたことがきっかけです。

 

たとえば、戦争による死亡は壮年男子を中心に影響を与え、赤ちゃんや老人にはあまり与えないというデータがあります。これは、戦争による死亡率は戦争を何歳で体験したかが重要になるということであり、年齢効果と時代効果に加えて、コホート効果というものを仮定する必要があるということになります。

 

コホートの概念は、人口統計学以外にも医学・生物学・社会学・政治学など様々の分野で用いられており、心理学では1960年代中頃から70年代にかけて、アメリカの心理学者であるシャイエやドイツの心理学者であるバルテスらがコホート分析の理論的基礎を確立させました。

 

発達心理学や世代に関する心理学については、こころ検定3級の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

ページ一覧に戻る