コラム

ギャンブルと心理学の関係

2023.1.26
  • 依存症
  • ストレス

ギャンブル行動やギャンブル依存症と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。 

 

 

日本では、パチンコや競馬などの公営ギャンブルが実施されています。
その上で、カジノ誘致などの構想も起きており、さらに、ギャンブルをする場所の増加とギャンブルを行う人の増加が予想されています。
しかし、ギャンブルには依存や借金、破産などの多くの問題があります。
では、ギャンブルという行動には、どのような心理が働いているのでしょうか。
 

 

まず、なぜ、ギャンブルをするのか、ということに心理学が関連しています。
ギャンブルに熱中しすぎて依存症になってしまう人もいれば、人生で一度もギャンブルをしたことがないという人もいるわけです。

では、このギャンブルに対する個人差はいかにして発生するのでしょうか。
様々な研究の結果、パーソナリティ(性格)の傾向、特に主要5因子理論(ビッグ・ファイブ)における誠実性(勤勉性)という因子が強い影響を及ぼすことが判明しています。

誠実性(勤勉性)とは、そのものずばり、真面目さの傾向を示すパーソナリティ因子です。
誠実性(勤勉性)が高い人は、責任感が強く、あらゆることに真面目で勤勉です。

逆に誠実性(勤勉性)が低い人は、無責任・中途半端・根気がない・気まぐれ・浪費癖・いい加減などのパーソナリティ傾向を持っています。
こういったパーソナリティ傾向は、そのまま日常生活の行動やその人の生き方にも反映されていきます。

 

研究の結果、誠実性(勤勉性)の高い人は、結果的に学力は高くなり、仕事も真面目にこなし、貯蓄についても“浪費しない”という性格傾向が経済的な安定を生むことが判明しています。
従って、誠実性(勤勉性)の高い人はギャンブルをせず、誠実性(勤勉性)が低い人はギャンブルをする傾向が認められています。

しかし、これは大きく「する」「しない」という観点で捉えた場合であり、ギャンブルをする人が依存的になってしまうかどうかは、誠実性(勤勉性)の傾向のみでは明確に判断することはできません。 

 

 

では、ギャンブルに依存してしまったり、なかなか止めることができないという状態には、どのような心理が関わっているのでしょうか。
ギャンブルはリスクを伴う行動です。そのため、リスク認知という情報処理機能が重要になってきます。

研究の結果、人間がリスクをある程度、正確に認知するためには、繰り返し経験をつまなければならないということが判明しています。
つまり、ギャンブルにおいて「これ以上はマイナスになるだろう」というリスクを把握するためには、何度かギャンブルを繰り返さなければならないということです。


しかし、ギャンブルを繰り返すうちに、リスクを認知して回避するよりも先に、リスクに慣れてしまったり、リスクに対する感受性が低下してしまいます。
その結果、ハイリスクなギャンブルを続けてしまうという結果になってしまうのです。
これは、前述のパーソナリティ(性格)の傾向とは異なり、誰でもハイリスクなギャンブルを続けてしまう「きっかけ」が私たちの認知機能の中に含まれているということを示しています。
 

 

ギャンブルと心理学に関する面白い研究もあります。
オーストラリアで実施された実験では、ワニ園を訪れた人々のうち、実際にワニに触れた人に、ワニに触れたことに対する嫌悪感についてアンケート調査を実施しました。

その上で、スロットゲームのギャンブルに参加してもらいました。
その結果、ワニに対する嫌悪感が強い人ほど、スロットゲームによるギャンブルに慎重な姿勢で臨む傾向が認められました。
逆にそれほど嫌悪感を感じなかった人は、リスキーな姿勢でギャンブルに臨む傾向が認められました。
人間の意思決定とストレスには強い関連が認められており、強いストレス状態にある人は、リスキーな意思決定をする傾向が認められています。
この実験でもワニに対する嫌悪感 = ストレスの程度と考えることができるため、ストレスとギャンブルの関係についても明らかにするものとなっています。 

 

 また、現実社会においても、ストレスとギャンブルの関係が明らかになる出来事も発生しています。
アメリカのカリフォルニア州・オレンジ郡にあるベアリングス銀行のニック・リーソンとロバート・サイトロンは、自身の務める銀行で非常に複雑で入り組んだ金融派生商品を取り扱いはじめました。
2人がどの程度のストレスに曝されていたか明確ではないものの、2人ともギャンブル的な投資を繰り返してしまいました。

その結果、2人が発生させた損失によって、ベアリングス銀行とオレンジ郡が経済的に破綻してしまいました。
このように、ギャンブル的な行動とストレスの間には関連性があり、その結果、ギャンブル的な行動が大きな問題となってしまうこともあるのです。 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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