コラム

5月病とは

2018.6.7 心理
  • ストレス
  • こころ検定(R)

 

 

5月病という言葉を耳にしたことがある方は多いかと思います。

大まかにいえば、5月の初旬、ゴールデンウィーク明けごろにやる気や活力が低下し、勉強や仕事に身が入らなくなるような状態のことを指すものです。

 

「病」という字が当てられており、やる気などの精神面の問題があることから精神疾患の一種ではないかと思われる方もいるかもしれませんが、DSM等の診断マニュアルには「5月病」の項目は存在しません。
では、心理学的に「5月病」とは、いかなるものとして定義されているのでしょうか。

 

 

心理学において、5月病は大学入試による緊張が解消された5月連休明け頃から、抑うつ無気力状態の学生が増加することから名づけられたものとして知られています。
従って、基本的には5月病というのは「大学1年生に特有の精神状態」ということができるわけです。

 

また、5月病の英訳は「freshmen’s syndrome」となり、やはり「新入生に特有の症候群」という意味合いがあります。
5月というかなり限定的な期日が多くの大学生の精神状態に影響を及ぼすメカニズムは以下のようなものであるとされています。

 

1. 日本の大学受験は、基本的に高校生の頃からの長期間の試験勉強後に実施される。

2. 長期の勉強および人生の重要なターニング・ポイントとなる大学受験は大きなストレス要因となる。

3. 大学合格後は受験によるストレスは解消されるが、新生活への準備に関するストレスが発生する。

4. 大学での新生活が4月からスタートし、新たな環境への適応が進む。

5. 4月末からはじまるゴールデンウィークにより、一旦は大学という新たな環境から距離を置く生活になる。

6. 休日の間はそれまでの緊張が解けるが、心身の疲労が出てくる。しかし、疲労が完全に回復するほどの休日数ではない。

7. ゴールデンウィークが明けて再び大学に行くことになるが、疲労回復が追いついておらず、また、完全に適応しきれていない環境に戻ることに抑うつ的になってしまう。

 

 

5月病はこのような環境的・日程的な要因が重なることで発症すると考えられます。
大きなストレスの発生するものの、それは強制的に「ある時期」を境に無くなり、続いてすぐに新たな環境への適応に関するストレスがやはり強制的に発生し、さらにまた強制的に「短い休みと再始動」が起こるという流れになるわけです。

 

これらの状況は基本的に当事者(大学生)がコントロールするのが難しく、個人要因が差し挟まれる余地があまりありません。
5月病は非常に状況要因が強いものなのです。
もし、日本にゴールデンウィークというものがなかったり、海外のように9月に新大学生活がスタートすることが多ければ、5月病がこれほど認知されるものとはなっていないでしょうし、また「5月病」ではなく「10月病」などのように異なる名称になっている可能性もあるわけです。

 

状況要因が重なった結果、5月病になるということを考えると、必ずしも「5月」という期日はマストの条件ではないということにもなります。
そこで、より学術的な概念として、スチューデント・アパシーというものがあります。

 

アパシーとは、無感動・無感情・無関心・感情鈍麻を意味する用語です。
本来は、ある環境刺激に対して感動したり、興味を持ったり、感情表現が生じるはずが、アパシーに陥るとこれらの反応が生起しない状態になります。

 

アパシーはうつ病などでよく認められる症状ですが、いわゆる「5月病」の状態の学生を指して、学生無気力症候群(スチューデント・アパシー)というものが有名です。

 

スチューデント・アパシーの概念を提唱したウォルターズは、アパシー状態に陥った学生は、学業に対する意欲が完全に喪失し、自発的・能動的な行動が消失し、学業を続けることが不可能となるとしています。

 

日本の大学生は少なからずアパシー状態に陥っていることが多いとされており、それは何も「5月」に限ったことではないともいわれています。
また、学生自身が「自分は今、スチューデント・アパシーなのだ」ということに気がついていない場合が多いとされています。

 

アパシーは長期間の入試勉強や新生活への適応がストレスとなって起きることが多いわけですが、学生生活における高ストレス要因はそれだけではありません。
従って、大学の学生相談の現場などでは、ゴールデンウィーク前後に相談が増えることへの対策も当然実施されますが、4年間という長期間の大学生活の節目、節目で学生の抱えるストレスへの対応が求められています。

 

 

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