心理

2019/11/26

ダーク・トライアドとは

ダーク・トライアドとは、問題行動などの背景となるパーソナリティ特徴であり、犯罪心理学や臨床心理学において研究されているものです。

反社会的行動や犯罪行動を起こしやすい傾向を持つ人が、少なからず存在していることが知られています。

 

しかし、多くの人が法律を守り、平和に生活している中で、なぜ、反社会的・犯罪的な行動を実行してしまう人がいるのでしょうか。

 

このような問題について、心理学では、犯罪心理学および臨床心理学の観点から研究が進められています。

 

最近、反社会的傾向や犯罪的傾向に関するパーソナリティ研究において、ダーク・トライアドという概念が注目を集めています。

 

“トライアド”とは3つの特徴が相互作用を及ぼすというような意味であり、三角形(三つ組み)の関係で示されるものです。

 

つまり、ダーク・トライアドとは、反社会的・犯罪的などの“悪い”・“黒い”とされる行動傾向の背景にある三つ組みのパーソナリティ特性ということです。

 

ダーク・トライアドを構成するのは、マキャベリアニズム・ナルシズム・サイコパシーの3つです。

 

マキャベリアニズムとは、イタリアの政治思想家であるマキャヴェリが著書である『君主論』や『政略論』などの中で提示したものです。

 

これは、目標達成のためには冷淡な手段を使うことも辞さず、嘘も方便と考え、理想よりも現実の利益を重視するなどの側面のことであり、皇帝や王などの君主(政治的指導者)には、この傾向が必要な要素であるとされています。

 

後にクリスティーとガイスは、こうしたマキャベリの思想に共鳴する人々がいることに注目し、これを対人行動に影響を及ぼす重要な個人差変数の1つとして捉えました。

 

そして、これをマキャヴェリアニズム(マキャヴェリ主義)と名付け、個人差を測定するためのマキャベリアニズム尺度を開発しました(現在はMach Ⅳが最もよく用いられています)。

 

マキャベリアニズム尺度は20項目からなるリッカート尺度で、他者を操作する戦術(嘘やお世辞など)に対する肯定的態度、シニカルな人間観、伝統的な道徳性の軽視などの側面が測定されます。

 

従って、マキャベリアニズムの特徴は、対人操作・搾取・道徳観に対する冷笑的無視・自己中心・欺瞞・超合理的思考に基づく行動などとなります。

 

ナルシシズムとは自己愛性傾向のことです。語源は、湖面に映った自分の姿に恋したギリシア神話ナルシスに由来しています。

 

精神分析学では、リビドーを自己に充当することを意味しており、フロイトによれば誕生直後の自他の区別が未分化な時期にはリビドーは基本的に自己に向けられるものの(一次的自己愛)、発達後に本来は他者に向けられるべきリビドーが自己へ充当されることがあり、後者を一般に自己愛(二次的自己愛)とよびました。

 

つまり、成長・発達の過程において他者に向けられるようになる愛情や愛着が、自分自身にだけ向いているような状態がナルシズムであり、誇大性・高い自尊心・エゴイズム・共感の欠如などの特徴があります。

 

サイコパシーは精神病質と訳されるものであり、歴史的にいくつかの意味が変遷されてきています。

 

たとえば、精神疾患の病前性格という意味、精神疾患と健常な精神状態との中間という意味などです。

 

また、シュナイダーは平均的像という意味で定義される正常なパーソナリティからの逸脱状態であり、そのパーソナリティのために本人または社会が悩むものをサイコパシーと定義しており、現在はこのシュナイダーの定義がサイコパシーの広義の意味として広まっています。

 

サイコパシーの特徴は、継続的な反社会的行動・衝動性・利己主義・無反省などです。

 

ダーク・トライアドは反社会的行動や犯罪行動の要因として考えられている一方で、その特徴をパーソナリティ心理学や社会心理学、産業・組織心理学の観点からも検討されています。

 

たとえば、ダーク・トライアドは、交渉場面でのパフォーマンスが高く、ストレス耐性が高く、責任感の伴う仕事を好む傾向があることが知られています。

 

また、ナルシズム傾向を持つ人は、そうでない人と比較すると給与が高く、職場満足度が高いことも判明しています。

 

一方で、サイコパシー傾向を持つ人は、そうでない人と比較すると、職場での非生産的行為の多さや、職場満足度の低さ、給与の低さが認められています。

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