心理

2020/4/16

群集心理とは

個人ではなく、集団になると、なぜ人は普段と異なる行動を取るのでしょうか?
心理学では、群集心理という観点から検討しています。

 

 

人は個人ではやらないようなことも、集団になるとやってしまうということがあります。
いわゆる“群集心理”とは、主に社会心理学の観点から研究されています。

 

そもそも、群集とは「不特定多数の人間が、共通の動因のもとに一時的にある場所に集まってできる未組織な集合体のこと」と定義されており、“群衆”と表記されることもあります。

 

そして、共通動因の発生の仕方の違いによって、以下の3つに分類されます。

 

(1)突発的群集:事故や災害など予測不能な緊急事態の発生によってできる

(2)偶発的群集:人々が共通に惹かれるような潜在的動因が存在する場所に大勢の人が一斉に押し寄せてできる

(3)定期的群集:共通の動因をもつ人々が定期的に一定の場所に集まってできる

 

また、群集が動態的であるか受動的であるかによって、動態的な場合は暴衆(モッブ)と、受動的な場合を聴衆に分類することができます。それぞれの特徴として、

 

 

1.攻撃的暴衆(暴徒):リンチやテロ、暴動等を行うもの

2.逃走的暴衆:パニックなど

3.利得的暴衆:バーゲン・セールに殺到するなど

4.表出的暴衆:リオのカーニバルの舞踏群集やデモ隊など

*暴衆:激動的な共通動因によって駆り立てられている活動的群集のこと。

 

暴衆は基本的に未組織な低次の集合行動であるとされていますが、心理学者のスメルサーによって、実は高次の社会運動との連続性(デモ隊の活動からスタートし、最終的に独裁政権状態を覆すなど)が指摘されています。

 

 

また、聴衆については偶発的聴衆(たまたま、そこに複数の人間がいただけ)と意図的聴衆(目的があって複数の人々が集まった)の2形態に分類するケースもあります。

 

さらに群集の状態が組織化されているのか、未組織の除隊なのかという観点から、同一の目標をもつ者が同一の場所に殺到し競争しあってできる無統制群集と、既存の権威や統制に反発してできる反統制群集、あてもなくさまよう人々によってできる非統制群集の3つの形態分類もあります。

 

群集に様々な種類が前述のようにあるわけですが、心理学者のル・ボンは、群集に巻き込まれた人は、自己の意思による判断ができなくなると同時に、群集には個々人の時とは異なる心性が働くと考え、群集心理の特徴を非合理性・精神的同質性・感情性・匿名性・無責任性・被暗示性等にあると指摘しています。

 

つまり、群集とは一様に「良くない状態の集団」というニュアンスが強いわけです。
これらの個人を超えた集団(群衆)や社会という、より大きな単位で人間の心理を研究しようとする潮流が現在の社会心理学の礎となっているのです。

 

こういった社会心理学の基盤となるような考え方がル・ボンのようなフランスの科学者から発信されていったのは、フランスにおいてフランス革命やそれに伴う民主主義の確立などが大きな影響を及ぼしていたのではないかと考えられています。 

 

 ル・ボンはフランスの代表的な社会心理学者ですが、同時期にヨーロッパにおいて、やはり群集(群衆)に関する研究者がいました。

 

スキピオ・シゲーレはイタリアの社会心理学者・犯罪心理学者であり、ル・ボンと同時期に活躍していた専門家です。
1892年に シゲーレは『犯罪的群衆』という名著を執筆しています。

 

この著書の中でシゲーレは、やはり群集(群衆)を「良くない集団」というニュアンスで捉えており、犯罪心理学的な観点を多く取り入れ、人間の集団は状況によって犯罪行為に手を染めてしまうということを述べています。 

 

イギリスの社会心理学者であるウィリアム・マクドゥーガルは人間の社会的行動を本能という観点から研究しています。

 

マクドゥーガルは人間の本能の持つ特徴として、逃走・闘争・拒否・好奇・養育・誇示・従属・群居・獲得・建設・生殖などを挙げており、これらの特徴が人間の社会的行動を説明する基礎であり、それぞれの特徴に対応した感情があるのではないかと述べています。

 

また、マクドゥーガルは個人の心理的過程を「個人心」と定義し、それに対して社会的・群集(群衆)的な心理的過程を「集団心」と定義し、明確に区別できるものであるとしています。
さらに、マクドゥーガルは『社会心理学入門』という名著も残しています。
 

 

 

また、近年の群集(群衆)に関する研究では、群集の精神的同質性は幻想にすぎないという創発規範説が提起されたり群集に参加する動機づけは必ずしも同一ではなく多様であり合理的要素も少なくないという指摘がなされ知見の再検討が進んでいます。

これは、より洗練された研究の結果、思っていたほど群集は「良くない集団」」ではないということを示しています。 

このように、群集心理に関する研究はヨーロッパを中心に発展していったという経緯があるのです。 

 

 

新型コロナウィルスと群集心理の考察


 

日本だけでなく、国際的な社会問題となっているのが、新型コロナウィルスの感染拡大です。
では、個人の問題ではなく、社会的な問題である新型コロナウィルスの感染拡大と群集心理には、どのような関係があるのでしょうか?

本コラムの最後は新型コロナウィルスの感染拡大という状況と群集心理の関係について解説していきたいと思います。 

 

 

新型コロナウィルスの感染拡大と群集心理の関係性において、最も大きなトピックスはインフォデミックという問題です。

 

インフォでミックとは、パンデミックとインフォメーションを合わせた用語であり、情報の爆発的な氾濫や拡大ということを意味しています。
新型コロナウィルスの感染拡大の中で、インターネット、特にSNS上で真偽不明の情報や虚偽の情報(フェイクニュース)が流布し、これを多くの人々が真に受けてパニック状態となり、社会的に大きな動揺が引き起こされています。

 

つまり、現在、新型コロナウィルスによって、世界中でパンデミックと合わせてインフォデミックが発生しているという状況なのです。

 

インフォでミックの具体的な影響として、根拠のない情報によって、買い占め行動が頻発し、特定の商品が手に入らなくなるという問題が日本をはじめとする世界各国で発生したという報告があります。

 

そのため、WHO(世界保健機関)は2020年2月2日に、大量情報伝染( マッシブ・インフォでミック:Massive Infodemic )」を宣言しています。
そして、W
HO(世界保健機関)は専門チームを組織し、WebサイトやSNS上の誤った情報を監視し、対応に当たっています。

 

この活動にFacebook・Twitter・Googleも賛同し、Web上の誤った情報の監視と削除を実施しています。
また、
Amazonも「新型コロナウィルスから保護することができる」という誤った主張をした100万点以上の商品を禁止・出品停止とし、同時に過度に高額な健康関連商品の出品を数万点分削除するという対応をとっています。 

 

このように、群集心理の問題は現在、具体的な社会問題として発生しており、これを根本的に解決することが難しい状況です。そのため、WHO(世界保健機関)やFacebook・Twitter・GoogleAmazonなどの世界的な大企業が「情報のコントロール」というアプローチで対処しているのです。 

 

しかし、近年は心理学者のターナーらによって、群集の精神的同質性は幻想にすぎないという創発規範説が提起されたり、群集に参加する動機づけは必ずしも同一ではなく多様であり、合理的要素も少なくないという指摘がなされ、知見の再検討が進んでいます。

 

これは、より洗練された研究の結果、思っていたほど群集は「良くない集団」」ではないということを示しています。

 

群集に関する考え方は時代とともに変遷しています。
たとえば、心理学者のル・ボンは1800年代後半から1900年代にかけては「群集の時代」と考えていました。

 

これは、新しい研究が出る前の話なので、いわゆる「良くない集団」という捉え方でした。
しかし、心理学者のタルドはル・ボンとほぼ同じ時代に研究活動をしていたものの、その時代は群集ではなく、個人から出発し,模倣を介した各個人の集合である「公衆」の時代として規定していました。

 

マス・コミュニケーションや情報ネットワークの急激な進化と世界的な広がり、特にインターネットやIoTの急速な普及に伴って、個々人は空間的に分離しているものの、世論のもとに精神的に集合している群集と定義される「公衆」への関心が高まっており、群集研究は新たな展開をみせようとしています。

 

群集や公衆などのいわゆる集団に関する心理学については、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、ご検討いただければと思います。
 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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