コラム

バイオフィードバック療法とは

2018.9.7 心理
  • 生理心理学
  • こころ検定(R)

 

 

バイオフィードバックという用語は、個人の単独あるいは複数の生理反応に関する情報を視覚・聴覚・触覚など知覚可能な刺激に変換して本人に呈示することにより、生理心理学的な観点から状態を把握し、自己調節を促進しようとするアプローチのことを指します。

 

バイオフィードバックは、当初は大型の機材やモニターを利用して、自身の生理状態を対象者本人に見せるという手法が取られていました。
現在では、タブレットやスマートフォンなどを活用して、WifiやBluetoothによる無線でのデータのやり取りが可能となり、より身近で、より簡単に実施できるようになってきています。

 

 

バイオフィードバックは心理学者のキンメルヒルがオペラント条件づけの手法を用いて強化を付随させた結果、皮膚抵抗反応の増大が認められたと報告したのが最初だと言われています。

 

それ以前には、条件づけの中でも、レスポンデント条件づけに代表される「生まれつき備わっている刺激-反応の関係性」よってのみ変容するといわれていた生理的反応(自律神経系に関する反応)がオペラント条件づけによっても変化するということが判明したわけです。

 

そして、バイオフィードバックが心理療法として確立されていきます。
脳波や心拍、交感神経・副交感神経の状態は、ストレスや精神疾患との関りが深く、客観的な指標となることは既に様々な研究によって分かっています。
しかし、私たちはそれを日常生活の中で「目で見て」確認することが難しいわけです。

 

それを「目で見て数字として確認できる」状態にするのがバイオフィードバックであり、これを心理カウンセリングに応用するのがバイオフィードバック療法です。
代表的な手法としては、脳波計で脳波を測定しながら、それをモニターに映してクライエントに見せるというものがあります。

 

脳波の中でもα波はリラックス状態で発生することが多いといわれています。
そこで、クライエントにリラクゼーション技法を実施しながら、リアルタイムでモニターに映る脳波を確認させ、α波が出現している(α波の成分が大きくなっている)状態を認識させます。
そして、その状態を維持したり、自然に出せるように訓練をすることで、リラックス状態を自分で作り出せるようにしていくわけです。

 

 

バイオフィードバック療法は自律訓練法とセットで実施されることが多いものです。
自律訓練法は自己暗示や他者暗示によって、副交感神経が活性化している状態を作り出すものです。

自律訓練法では、筋弛緩や温感、心拍などをコントロールすることで、副交感神経を徐々に活性化させていきます。
筋弛緩の状態は筋電図で、温感は体表温で、心拍は心電図や心拍計でそれぞれ確認・モニタリングが可能です。
バイオフィードバックに利用される機器を自律訓練法中のクライエントに接続することで、どれくらい訓練が上手く進んでいるのかを明確化することができます。

 

 

近年、小型・軽量・無線のウェアラブル心拍センサーが開発・普及したことで、心拍変動解析によるバイオフィードバックも多く実施されるようになってきています。

 

心臓は自律神経の拮抗作用で動いており、心臓の発する周波数を解析することで、交感神経・副交感神経の状態を把握することができます。
心拍変動解析はストレスチェックや精神疾患の症状の程度の理解など、心理カウンセリングの場面でも広く活用されています。
そして、心拍変動解析とバイオフィードバックを組み合わせたのが、心拍変動バイオフィードバック(HRV-BF)です。

 

他のバイオフィードバック療法と同様に、心拍変動の状態をリアルタイムでモニタリングし、これをクライエントに見せ、呼吸などをコントロールさせてリラックス状態を“学習”させていきます。
心拍変動バイオフィードバック(HRV-BF)も盛んに研究が進められており、ストレス低減や精神疾患の治療・支援において効果を発揮しています。

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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