コラム

青年心理学とは

2017.12.21
  • 発達心理学
  • こころ検定(R)

 

 

発達心理学の1分野に青年心理学という分野があります。
日本には各発達段階の区分に関する専門的な学術団体があり、日本青年心理学会もその1つです。
2017年は日本青年心理学会の年次大会が11月に開催されています。

 

 

大学によっては、講義名が“発達心理学”ではなく“児童心理学”や“青年心理学”として授業を実施しているところもあります。
これは“発達”の心理学として講義を実施しようとしても、とても1年間や半年では胎児期から老年期まで終えることができないので、各発達段階区分に応じた授業を実施することがあります。
逆に言えば、各発達段階の1区分だけでも、大学で1年間(半年)の講義が可能なほど、様々な研究成果や理論があるということです。

 

 

青年期とは、12歳ころから30歳ころまでの、非常に長い期間を指します。
青年期は、青年期前期(12~15歳ころ)、青年期中期(15~18歳ころ)、青年期後期(18~20歳ころ)、後青年期(20~30歳ころ)というように細かく区分されることもあります。

 

青年期は国や文化、社会、時代背景などの要因の影響を受けます。
そのため、2017年現在の日本では、20歳はまだ学生である人も多く、就職していない、親元で暮らしているという人も多いという状態だと考えられます。

 

また、30歳の段階で結婚・出産をしている人が9割以上ということはないと考えられます。
このように、青年期は「今がどんな時代なのか?」や「どんな社会や文化の中で生活しているのか?」を如実に反映したものになり、それに応じて青年心理学という学問領域そのものも変わっていきます。

 

 

青年心理学という学問領域の歴史を紐解いてみると、既にギリシア時代から哲学や教育といった方面から関心が寄せられ、文献等が記述されてきました。
これは「心理学」とい学問そのものが体系的に誕生する前の段階であり、青年期の心理というものへの注目が非常に高かったということが分かるかと思います。

 

科学的な学問としての青年心理学の誕生は「青年心理学の父」とよばれるホールによる研究がきっかけであるとされています。
ホールの著書である『青年期』が1904年に刊行されたことが、科学的根拠に基づいた青年心理学初の文献であるといえるでしょう。

 

ホールは、個体発生は系統発生を繰り返すという生物学の「反復説」を人間の発達に応用し、個人の発達は人類のたどった歴史に対応する発達段階を繰り返すという「心理的反復説」を提唱しました。
そのため、人類の歴史になぞらえた場合、青年期は疾風怒濤の段階に至るものであるとされています。

 

 

ホールによる研究や著作の発刊を契機に、青年心理学はアカデミックな分野で広まっていきました。

 

第1次世界大戦後のドイツでは、青年期の段階の人々が起こす問題が社会問題化したことで、青年心理学の研究が盛んになりました。
そんな中、心理学者のビューラーは多数の青年期の人々が書いた日記を分析し、その心理的特徴を把握しようと試みました。

 

その結果、17歳頃を境界として青年期を2つに区分し、否定的傾向の強い前期を思春期、肯定的傾向の強い後期を青春期とすることを提唱しました。
また、精神的な相互の関係性を、客観的に妥当な認識の形式で意味あるものとして捉えるという了解心理学という分野を創始したシュプランガーは、青年期の個人の主観的体験を超えて、青年期の生活やその歴史的・社会的環境を広く理解することで、青年期を了解(理解)することが、青年心理学にとって重要であると主張しました。

 

他にも青年期の発達過程は児童期と連続してゆっくりと進んでいくと主張したホリングワースや、青年期の特徴を「境界人」の特徴として定義したレヴィン、南太平洋の島であるサモアで生活している青年には、動揺や葛藤が発生していないということを報告したミード、青年期を第2の個体化過程としたブロス、アイデンティティの確立がモラトリアムとしての青年期の発達課題であるとしたエリクソンなどの研究があります。

 

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