コラム

K-ABCとは

2017.9.7 心理
  • 心理療法
  • 心理カウンセラー

 

 

知能検査・発達検査には様々な種類があります。

 

例えば、ウェクスラー式知能検査ビネー式知能検査津守式乳幼児発達検査などがあります。

これらはいずれも医療保険の対象となっている標準化された検査です。
そして、同様に医療保険の対象となっている知能・発達検査として、K-ABCがあります。

 

K-ABCとは、Kaufman Assessment Battery for Childrenの頭文字を略したK-ABCもので、アメリカの心理学者であるカウフマン夫妻によって開発されたものです。

 

「Battery」の名が示す通り、複数の下位検査で構成されたアセスメントツールとなっています。
K-ABCはカウフマン夫妻によって、アメリカ版が1983年に開発され、その後、改訂版であるK-ABC-Ⅱが2004年に開発されました。

日本版は1993年に標準化され、2013年に日本版K-ABC-が発売されました。日本語版の標準化にあたっては、心理学者の松原達哉らによって、K-ABC心理・教育アセスメントバッテリーとして販売されています。
従って、K-ABCは比較的新しいアセスメントツールであるといえます。
K-ABCは、子どもの精神発達や知的活動を認知的処理過程と習得度の2つの側面から測定することを目的としています。
特に神経発達症(発達障害)のアセスメントに効果的です。認知処理過程は継時尺度の下位検査が3つ、同時尺度の下位検査が4つ、学習尺度の下位検査が2つ、計画尺度の下位検査が2つの合計11個の認知尺度で構成されています。

元々、知能は同時処理と継時処理の2つの別個の能力であるということを提唱したのはルリアでしたが、このルリアの理論を受ける形で検査内容が作成されています。

 

さらに、第2版であるK-ABC-からは、知能の構造に関する理論である、結晶性知能と流動性知能についても盛り込んだ検査となっています。

 

また、習得度は語彙尺度の下位検査3つ、読み尺度の下位検査2つ、書き尺度の下位検査が2つ、算数尺度の下位検査が2つの合計9つの習得尺度で構成されています。

 

これらの検査により、子どもが得意とする認知処理様式を発見し、それを子どもの指導・教育に活かすことができます。

K-ABCの最大の特徴ともいえるものとして、認知機能検査が非常に充実していることです。
そのため、ウェクスラー式やビネー式、津守式が医療保険点数の発達および知能の検査にカテゴライズされているのに対して、K-ABCは認知機能検査にカテゴライズされています。

 

K-ABCは、イーゼルとよばれる問題掲示板を道具として使用します。
そのため、検査実施時にマニュアルを使用せずに検査が可能です。
また、非言語性尺度が設定されているため、難聴児や言語障害児にも検査が実施できます。
さらに、子どもを対象としているということを考慮し、検査用具がカラフルになっており、子どもの興味・関心を持続させることができるようになっています。
検査の適用年齢は2歳6か月から18歳11か月までとなっており、年齢によって実施する下位検査の種類や数が異なります。

 

また、主に成人以降を対象とする検査として、カウフマン青年・成人知能検査(Kaufman Adolescent and Adult Intelligence Test : KAIT)もあります。

KAITは、11歳から86歳までという非常に広範な年齢を対象とするものです。
検査は6つの主要な下位検査を用いる標準バッテリー、さらにこの6つに加えて4つの追加的な下位検査を用いる拡張バッテリーという2種類の方法で検査を実施することができます。
K-ABCについては、日本K-ABCアセスメント学会という学術学会があります。
日本K-ABCアセスメント学会では、日本版K-ABC心理・教育アセスメントバッテリーを中心とした心理・教育アセスメントの有効活用を目的として、科学的な研究をはじめとする様々な活動を実施しています。

2017年4月現在、会員数は約700名であり、全国に16の地域研究会を擁しています。
学会では、研究大会の開催、研究誌の刊行、会報の発行、研修会の企画運営、K-ABCの検査者の資格認定などを行っています。
今年、2017年は8月に日本K-ABCアセスメント学会の年次大会が開催される予定となっています。

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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