こころの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか?
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。7月1日は「こころの日」に制定されています。これは日本精神科看護協会が1998年に制定したものです。1987年に精神衛生法が精神保健法に改正され、翌年の1988年に施行されたことがきっかけとなっています。ちなみに、精神保健法は1993年の一部改正、1995年の精神保健福祉法への名称変更・改正となって、今に至っています。こころの日は精神疾患や精神障害者に対して正しい理解を図り、こころの健康の大切さを再認識してもらうことが目的となっています。
では、精神保健福祉法などの心理学や精神医学に関する法律には、どのようなものがあり、どのような背景があるのでしょうか。
心理学や精神医学、メンタルヘルスに関する法律として、日本で最初に施行されたのは精神病者監護法であるとされています。この法律は1 9 0 0 年にされたものであり、今から100年以上前に制定されています。この法律で「監護」という用語が使用されていますが、これは「看護」とは異なる意味があります。看護とは患者の健康状態や日常生活を支援し、治療をサポートすることを指します。一方で、監護とは生活の世話をすることを目的として、監督・保護をすることを指します。つまり、看護には治療・支援の意味が含まれているものの、監護には治療・支援というニュアンスがないという違いがあります。
精神病者監護法は精神障害者を許可なしに監護することを禁止するというものであり、患者の家族等が一般人としての判断で、勝手に患者を外に出さないようにすることを禁止するというものでした。ただし、これは患者を自宅に留まらせずに医療機関で治療・支援をするというよりも、医療機関に入院させて、外に出さないようにするというものでした。1900年代当時、日本だけでなく、世界的にも精神疾患の治療・支援が確立されていませんでした。そのため、医療機関においても治療・支援よりも、患者を「外に出さない」という以外に対処する方法がなかったわけです。しかし、医学的な判断ではなく、一般人(家族)の判断のみで患者の隔離などが実施されていたことは大きな問題であったため、少なくとも医療機関での隔離を実施するという方向性が定められたのです。
そして、1919年に精神病院法が制定され、公共の責任で精神病院が設立されるようになりました。つまり、それまでは必要な数の精神病院が存在していない地域などもあったわけです。それが精神病院法の制定により、患者数や地域の状況を考慮した公的な精神衛生の確立が進められることになりました。続いて、1950年には精神衛生法が制定され、より近代的な精神衛生がスタートすることになりました。さらに、1965年に精神衛生法の一部が改正され、各都道府県に精神衛生センターの設置、地方精神衛生審議会の設置、精神障害者の通院医療公費負担制度などが確立されました。
少し時代を下って1988年には 精神衛生法の一部が改正され、名称を精神保健法と改められました。精神保健法では入院形態として任意入院・医療保護入院・措置入院が設定され、患者の人権制限に関する医療行為も精神保健指定医のみが実施すると定められました。そして、1993年に精神保健法の見直しが行われ、さらに1995年に精神保健法の一部が改正され、福祉対策を充実させることを明確化するために法律の名称を「精神保健及び精神障者福祉に関する法律」、略称として精神保健福祉法と改められました。
このように、心理学・精神医学に関する法律は様々な変遷を経て、今に至っています。さらに、近年では、ハラスメント対策やストレスチェック、従業員のメンタルヘルス対策などのように治療・支援だけでなく、メンタルヘルスの予防に関する法律・制度なども増えてきています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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