【目次】
心理カウンセラーには、どのような専門性を持つ専門家であっても遵守すべき基本的態度があります。
これは来談者中心療法において提唱されたものです。ただし、来談者中心療法だけに限定されるものではなく、すべてのカウンセラーが遵守すべき最低限の基本的態度と位置づけられています。
具体的には、次の3つの基本的態度が重要とされています。
1.純粋性
純粋性とは、自己概念が一致している状態を指します。
自己概念とは、来談者中心療法やその背景にある人間性心理学における重要な要素の1つです。自分自身を客観的に捉えた認識のことであり、認知様式やパーソナリティ、能力、身体的特徴などに関するものです。自己観察や、周囲の他者からの言動・態度・評価などを通して形成されるとされています。
自己概念は過去・現在の経験を統合した知識であるとともに、将来の行動や意識のあり方を左右し、自分自身についての新たな知識の獲得を方向づけるものでもあります。
たとえば、「自分は良い父親だ」と強く考えている人は、子育てでうまくいった経験を記憶に留める一方で、子どもとの約束を破ったことは忘れてしまったり、問題の原因を自分以外のところに帰属させたりすることがあります。
このように自己概念は、自分自身の認知・感情・行動・パーソナリティに照らし合わせて、「自分はこういう人間だから、この現状は納得できるものだ」というように自分自身を理解する枠組みであるといえます。
実は、この自己概念が不一致の状態こそが、悩みを抱えている状態や、高いストレスにさらされている状態、精神疾患の状態であるとされています。そして、この不一致の状態を一致させていくのがカウンセリングであるとされています。
このとき、不一致の状態にある人同士がどれだけ会話をしても、お互いの問題は解決しません。また、一致している人同士であれば、たとえ何らかの問題を抱えていたとしても自分で解決できる状態にあるため、相談をする必要も、支援を受ける必要もないと考えられます。
つまり心理カウンセリングとは、自己一致の状態にあるカウンセラーと、自己不一致の状態にあるクライエントとの間で行われるものなのです。そのため、カウンセラーは必ず自己概念が一致した状態でなければなりません。
2.無条件の肯定的配慮
単に「無条件の肯定」や「受容」とも呼ばれます。
これは、カウンセラーはクライエントに対して、何の条件もつけずに受け入れる態度を取らなければならないというものです。
「無条件」とは、「この人の精神状態が良くなれば、私もカウンセリングをしたかいがある」といった考えも認められないということです。これは「カウンセリングをするかいがあるか、ないか」という条件に基づいた対応になってしまっているからです。
また、「家族だから助けてあげたい」「友達だから何とかしてあげたい」という気持ちも「条件つき」になるため、これも誤った対応ということになります。したがって、カウンセラーは自分の家族や友人のカウンセリングをしてはいけないのです。

3.共感的理解
単に「共感」と呼ばれることもあります。
これは、クライエントの認知様式などを理解したうえで、クライエントと同じように考え、感じ、理解することを指します。「なるほど、あなたはそのように考えたのですね。そして、このように感じたのですね」というように、あたかもクライエント本人であるかのように理解するのです。
これは同情とは似て非なるものです。同情は、クライエントの認知様式を理解しているのではなく、単に「あなたはかわいそうだと思う」「私もあなたと同じ立場だったらつらいと感じるだろう」というものでしかありません。どちらも、あくまで自分自身の立場から相手を理解しようとしているだけであり、相手と同じ考え方や物事の捉え方に立って理解しているわけではありません。
共感的理解と同情の違いをしっかりと身に付けることは、心理カウンセラーにとって重要な能力であるといえます。
心理カウンセラーの基本的態度については、こころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキスト『カウンセリング基本技法』の第6章で概観していますので、ご興味・ご関心のある方は、ぜひ学んでみてください。
さて、心理カウンセラーの基本的態度については、臨床心理学や精神医学の分野で学術研究が進められています。最新の研究では、次のようなことが報告されています。
純粋性(自己概念の一致)については、クライエントがカウンセラーを非常に敏感に観察しており、「本当に聴いているか」「演技ではないか」「決まり文句ではないか」といったことを感じ取っていることが示唆されています。このことが特に明確になったのはAIカウンセリングの研究です。純粋性に関わる人間的な温かさや文化的理解、協働感が不足すると、カウンセラーとクライエントの関係性が弱まってしまうことが報告されています。
無条件の肯定的配慮(受容)については、境界設定や倫理性、現実検討などとのバランスが重要であることが示唆されています。つまり、無条件に肯定し受容しながらも、カウンセラーとクライエントの間の境界線を保ち、倫理的な問題がないか、現実的な内容であるかをしっかりと確認する必要があるのです。
共感的理解については、共感的理解を高いレベルで実践できているほど、治療継続率や抑うつ・不安の改善率が高く、自殺リスクの低減にも効果があることが報告されています。また、共感的理解はオンラインカウンセリングにおいても重要であり、治療・支援に効果的であることが示唆されています。ただし、単に優しく接するだけの共感では不十分であり、正確な感情理解やタイミング、適切な言語化、クライエントに合わせた柔軟性などのほうがより重要であることが示唆されています。
・初回投稿:2023年6月29日
・リライト及び新規追加:2026年8月19日
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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