トレーニングの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。4月1日は「トレーニングの日」に制定されています。これは、スポーツ用品メーカーのミズノ株式会社が制定したものです。この日は新年度の始まりに伴い、ジョギングやフィットネスなどのトレーニングを始め、トレーニングの大切さをアピールすることを目的としています。
では、ジョギングやフィットネスなどのトレーニングと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
まずは、トレーニングが及ぼすポジティブな側面として、各種トレーニングには、単なるリフレッシュ以上の生物学的変化があるという点が挙げられます。私たちの脳の中に「Brain-derived neurotrophic factor:BDNF(脳由来神経栄養因子)」と呼ばれる物質が存在しています。これは脳内の神経細胞の成長・維持・生存・再生を促進するタンパク質であり、脳の栄養となる物質です。BDNFは脳の中でも特に海馬に多く存在し、学習能力向上や認知症予防と関係が深いものです。また、有酸素運動や適切な食事で増加し、うつ病や加齢に伴う認知機能低下の改善にも関連することが判明しています。有酸素運動を行うことにより、脳内でBDNFが増加し、神経細胞の成長や修復が促進されます。これにより、記憶力の向上だけでなく、ストレスに強い脳が作られます。
また、ジョギングなどの継続的な運動はセロトニンやドーパミンの放出を促します。さまざまな研究の結果、軽度から中程度のうつ病に対して、運動が抗うつ薬と同等の改善効果をもたらすことが示されています。いわゆる「ランナーズハイ」の状態は神経伝達物質であるエンドルフィンが深く関係しているとされていました。しかし、現在ではエンドカンナビノイドによる多幸感や不安解消の方が「ランナーズハイ」と関連が深いのではないかとされています。また、各種トレーニングには自己効力感を向上させるという効果もあります。たとえば、目標の距離を走れた、重いウェイトを上げられたというスモール・ステップの成功体験の積み重ねによって自己効力感が高まり、日常生活の困難に立ち向かう自信を身につけることができます。
ポジティブな影響も多く、メンタルヘルスに良い効果を及ぼすという側面が強調されがちなトレーニングですが、ネガティブな側面もあります。過剰なトレーニングは運動依存症(エクササイズ・アディクション)を引き起こす可能性があります。トレーニングなどの運動による快感に脳が慣れてしまうと、怪我をしていても、家族や仕事の予定を犠牲にしてまでも運動せずにはいられなくなってしまいます。また、運動できないことに強い罪悪感や焦燥感を抱くようになってしまうと、ネガティブな認知や感情にとらわれてしまいます。さらに、過剰なトレーニングを続けると、今度はオーバートレーニング症候群という状態になってしまいます。これは肉体の回復が追いつかない状態でトレーニングを継続するというものであり、自律神経のバランスが崩れてしまいます。オーバートレーニング症候群は燃え尽き症候群(バーンアウト)に似た状態を招き、原因不明の気分の落ち込み、イライラ、不眠など、うつ病に近い症状を引き起こします。そして、トレーニングがボディイメージの歪み(身体醜形障害)を引き起こしてしまう可能性があります。特にフィットネスや筋トレにおいて、SNS上の理想的な体型と比較しすぎることで「自分はまだ細すぎる」や「醜い」と思い込んでしまうという問題があります。その結果、摂食障害や過度なサプリメント摂取への依存に繋がることがあります。
つまり、トレーニングがメンタルヘルスに及ぼす影響にはポジティブとネガティブの両方があり、その境界線を意識することが重要なのです。メンタルヘルスにとって良い状態は週3〜5回、少し息が切れる程度で楽しさ、健康、リフレッシュを目的として、疲れたら、しっかり休むというものです。逆にメンタル不調につながる可能性があるのは、毎日欠かさず、限界まで追い込んでしまい、義務感、強迫観念、完璧主義を原動力にしてしまい、休むことに罪の意識を感じるような状態です。
このようにトレーニングについて、心理学では様々な角度から研究が進められています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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