 
                                    産業観光の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。10月25日は「産業観光の日」に制定されています。これは名古屋商工会議所文化委員会が制定したものです。日付の由来は2001年10月25日に名古屋市産業技術記念会が開かれ、翌26日に「産業観光サミットIN愛知・名古屋」が開催されたことがきっかけとなっています。なお、10月25日を含む1週間を産業観光週間となっています。
では、観光と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
まず、日本における観光産業そのもの現状について簡単に解説したいと思います。最新の統計データによると、2024年の訪日外客数3,687万人と過去最高を記録しています。また、2024年12月は単月で349万人を記録しており、こちらも史上最高の人数となっていま。また、訪日客の国内消費については、2024年の訪日外国人旅行消費額は8.13兆円となっており、費目構成は1位が宿泊費が33.6%、2位が買物代が29.5%となっています。
 
また、日本人の国内旅行消費については、2024年の国内旅行消費額が25.15兆円となっており、このうち宿泊費が20.33兆円、日帰りの諸費用が4.82兆円となっています。
観光業については、新型コロナウィルスの感染拡大の問題が大きな影響を及ぼしていましたが、2024年の段階では、コロナ前の状態にほぼ完全回復していることが報告されており、特に日本は受入と収入の伸びが顕著であることが分かっています。このように、コロナの影響もあったものの、日本の観光産業は国内・国外ともに好調であるというのが現状です。その上で、観光に関する心理学的な研究というものが重要となっているのです。
 
心理学の応用分野に産業・組織心理学があり、さらにその中に観光心理学というものがあります。観光心理学は産業分野としての観光業について、観光をする側の人間の心理について研究する学問分野です。
観光心理学では様々な角度から観光に関する心理学的な研究が実施されています。まず、観光をする側の人が何を理由に観光をするのか、という動機付けに関する研究があります。動機付けにはプッシュ型動機付けとよばれる個人の内面から湧き上がる欲求やニーズ、感情に基づいて行動を促す要因と、プル型動機付けとよばれる外部からの魅力的な要因によって行動を促す要因の2つがあります。これを観光に当てはめると、たとえば、プッシュ型動機付けには非日常欲求・リフレッシュ・自己呈示などが含まれます。一方で、プル型動機付けには満開の桜・温泉・地元ならではの食・アニメ聖地などのような目的地の持つ魅力が含まれます。
 
さらに、観光に行く前の期待がその後の満足度などに影響を及ぼすということも報告されています。観光に対する事前の期待が観光における実体験より大きければ不満や失望が起こり、逆であれば満足や感動が発生します。これにより、観光地やホテルなどに対するレビュー評価や再訪意図への影響があると考えられます。また、観光地がどれくらい混雑しているのかという指標がウェルビーイング(主観的幸福感)に影響を及ぼすことが知られており、混雑の状態を知覚することで満足感が低下し、地域住民との間に問題が発生する可能性が高まるとされています。
 
どの観光地に行くのかという意思決定については、認知心理学や行動経済学の観点から研究が実施されています。たとえば、できるだけ労力をかけずに意思決定をするヒューリスティックにおいては、観光地に関する写真を1枚だけ見て、その雰囲気で決めてしまうこともあると考えられます。同様に友達の一言が決め手になるということも考えられます。一方で、綿密な計算に基づいて、しっかりと情報収集をして意思決定をする人もいます。その場合、観光地に関するレビュー評価の星の数や平均値などを子細に吟味するということになります。これは意思決定におけるパーソナリティ特性の影響が考えられます。また、社会心理学的な観点として、最新のSNSの影響や伝統的な口コミの影響なども観光地の選択に影響を及ぼすことが判明しています。
このように、心理カウンセラーをはじめとする心理専門職にとって、統計学の知識は非常に重要なものであり、研究と実践のどちらにとっても必須のものとなっています。心理統計学については、こころ検定3級の第5章やこころ検定1級の精神医科学緒論のテキストでも概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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