抗疲労の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。5月16日は「抗疲労の日」に制定されています。これは、日本初の疲労回復専用ウェア(リカバリーウェア)を開発した株式会社ベネクスが制定したものです。日付の由来はリカバリーウェアの開発日である2009年5月16日と「こ(5)うひ(1)ろ(6)う」(抗疲労)の語呂合わせからとなっています。リカバリーウェアとは、人間が本来持っている自己回復能力を発揮させることを目的として開発されたウェアです。疲労が蓄積していても、単純に休養したり、睡眠をとったりするだけでは、十分な回復はできないとされています。そこで、ただ着るだけで心身共に緊張が解け、ゆったりと落ち着ける環境を作り出すためにリカバリーウェアが活用されるわけです。
では、疲労と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
産業・組織心理学において、仕事と疲労についての研究が実施されています。長時間労働や時間外労働などの仕事の量的負担が疲労を生み、生産性の低下やエラーの発生、場合によってはうつ病などの精神疾患の発症にもつながります。一方で、仕事の負荷が大きくなかったとしても、疲労が蓄積してしまうという現象があることが報告されています。それは単調労働に関する問題です。労働における単調感・人間疎外感については、20世紀初頭のフォード・システム(コンベア・システム)による大量生産方式の登場以来に端を発する問題であり、現在でも産業・組織心理学における研究対象となっています。単純・反復組立作業、計器盤の監視作業、製品の目視検査作業、キーパンチャーの作業などが単調労働に該当します。これらの作業には、高度の作業技能が要求されない、作業の自律性が乏しい等の特徴があり、労働意欲の低下、疲労等の問題の発生原因となります。日本では作業ロボットの導入、BGMの導入、1人の作業内容を増加させる職務拡大、作業を高度化する職務充実などの対策がとられていますが、最適な対策が模索中の段階であるとされています。このように、たとえ、楽な作業や負荷の少ない業務であっても、それが単調であることによって、疲労が発生してしまうということがあるのです。
疲労を測定・評価することができる心理検査があります。POMSは緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6つの因子が同時に測定できる心理検査です。POMSの「M」は「Mood」のことであり、一時的な気分・感情を測定することを目的としています。POMSでは、過去1週間の自分の「気分の状態」について、65個の質問に回答する形式です。ネガティブな感情を症状とする精神疾患には、うつ病・全般不安症・パニック症・心的外傷後ストレス障害など様々な種類があります。しかし、個々のクライエントで抱えている感情の種類や強度が異なります。POMSは感情の種類や強度についても把握することができるのです。また、活気というポジティブな感情についても把握・評価できるのも特徴です。つまり、POMSは疲労とその逆の概念である活気の2つを同時に測定・評価することができる心理検査なのです。POMSは医療保険の対象となっており、医療機関で実施されることも多いです。このPOMSは2017年に「POMS2」という新版が開発されました。変更点としては、質問項目の変更・標準化、7番目の尺度である「友好」の追加、「TMD得点」(総合的気分状態得点)の標準化、13歳から実施可能となり対象年齢が拡大(青少年用と成人用の2タイプ)、「今日を含めて過去1週間」のほかに、「今現在」あるいはその他の希望の時間枠を指定できる時間枠の設定などです。
このように、疲労は心理学において様々な角度から研究・実践が実施されており、私たちの日常生活の中で役立てられているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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