心理

2023/1/12

伝統文化と心理学の関係

日本の伝統文化と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。 

 

心理学の観点から文化を研究する分野があり、文化心理学とよばれています。
そして、文化心理学の観点から、日本の伝統文化や伝統芸能に関する研究も実施されています。
 

 

では、まず、文化心理学とは何か、ということについて解説したいと思います。
心理学では人間に影響を与える様々な「変数」の
1つとして文化というものを捉えています。

心理学的には、人間と環境との関係の中で文化を捉えようとすることが多いです。
たとえば、学習心理学・行動分析学の専門家であるスキナーは「行動を引き起こし、維持する社会的強化の随伴性」が文化であると定義しています。

 

文化心理学では、人間個人の認知・*感情・動機づけなどの心理過程が、その個人が生活する文化で受け入れられている慣習や意味構造によって形成され、逆にそうした心理過程が文化慣習・意味構造を維持・変容させるという両者の相互影響過程を研究対象としています。 

 

文化心理学では、概念・理論・方法論・研究対象者・研究結果の解釈の基準などの文化的等価性を多角的な観点から検討し、実験者効果や反応傾向など同一文化圏では問題にならない基本的な研究の方法の要素の文化差を調整し、研究そのものが引き起こす文化特有の倫理的問題などの影響に細心の注意を払い、実験や調査を実施することが強く要求されます。 

 

では、より具体的に日本の伝統芸能と心理学の関係について見ていきたいと思います。
まずは、文楽についてです。文楽とは、三味線と太夫による演奏・語り、そして、人形による芝居によって構成される伝統芸能です。文楽において、人形1体に対して、3人の「人形遣い」によって操演されます。
つまり、人形の操演には3人の協調が重要となるわけです。
そして、協調にはコミュニケーションが重要となるわけです。
 

 

■言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

心理学において、コミュニケーションとは言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションの2つに分けることができます。
言語的コミュニケーションとは、音声や書字(キーボード入力など)による、言語(記号)によるコミュニケーションです。
言語的コミュニケーションは意図的・意識的な行動によるものが多いです。
非言語的コミュニケーションとは、前述の言語的コミュニケーション以外の手法によるコミュニケーションです。
言語的コミュニケーションと比較すると、無意図的・無意識的な要素が強く、感情的な表現となることが多いです。
そして、非言語的コミュニケーションは次のような7つに分類されます。
 

 

 

(1)身体動作

 身振り・姿勢・表情・視線・瞬目・瞳孔反応などの目の動きなど。身振りについては、ボディ・ランゲージやジェスチャーなどとよばれるもの。 

 

(2) 身体特徴
容貌・スタイル・頭髪・体臭など。 

 

(3)接触行動
具体的には、握手・身体誘導・軽打・腕組み・肩を抱く・抱擁・手をつなぐ・腰を抱く・キス・頭に手で触れる・頭で頭に触れる・愛撫・抱きかかえ・攻撃するふりという14種類に分類される。 

 

(4)近言語

 発話に伴う形式的特徴によるものであり、音声の音響学的特徴や泣き・笑い、間投詞などのこと。 

 

(5)プロクセミックス

 人間が積極的に物理的環境を使用・形成し、社会関係の操作として物理的環境を使用するかを表す用語。日本語で直訳すると「近接学」と訳され、広義には空間行動学という名称でよばれることもある。プロクセミックスの具体例としては、対人距離・パーソナル・スペース・着席行動・なわばり・混みい(クラウディング)などがある。 

 

(6)人工物の使用
化粧・服装・装飾品などのこと。 

 

(7)環境
建築様式・インテリア・照明・温度・標識などのこと。 

 

 

これらの非言語的コミュニケーションの中でも、私たちがよく活用するのは、身体動作における視線や表情などです。

しかし、文楽の人形遣いは黒子として、常に黒い頭巾をかぶっているため、他の人形遣いの視線や表情を確認することはできません。
そこで、3人の人形遣いの中で、主遣いとよばれるメインを立てることで、残りの2人の人形遣いは暗黙の了解として、それに従うというルールが作られています。
さらに、文楽では「型」とよばれる決まった人形の動きが設定されており、基本はそれに従って操演するというルールが採用されています。

このように、視線や表情などの情報が活用されない場面でも、伝統文化の中で独自のコミュニケーション技術が育まれていったのです。 

いかがだったでしょうか。
このように、日本の伝統文化の中にも心理学的な要素があり、研究も進められているのです。
 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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