心理

2019/2/1

心理学史とは

大学の心理学科の授業の中に「心理学史」というものがあります。

 

最近は開講がすくなくなってきている傾向がありますが、実は心理学という学問の背景を知るために重要な分野であると考えられます。

 心理学の歴史は大きく哲学から派生した科学的な研究とは異なる部分と、近代的な科学的研究によるものの2つに分けられます。

 

最も古い「心理学」の歴史は古代ギリシアの哲学に端を発するものです。

  

当時、生物を生物足らしめているものとは何なのかというテーマが哲学の研究の主流となっていました。

 

その中で、アリストテレスやプラトンが様々な理論を展開しましたが、生物とは身体(=質料)と霊魂(=形相)が分離しがたく一体となった個物であるとし、身体の営みを通して霊魂の本質(働き)を明らかにすることを『霊魂論』(心理学)の課題であるとしました。

 

そして、アリストテレスは、霊魂論は第一哲学(形而上学)に次ぐ位置にあり、自然学のなかで最上位を占める学問であるとしました。

 

さらに、この霊魂論(心理学)の中に生化学的概念が取り入れられるようになっていきました。

 

しかし、最終的には近代科学思想を特色づける機械的原理へと取って代わられていきました。

 

ここで、心理学は古代ギリシャのものから、近代ヨーロッパのものへとなっていきます。

 

その際、哲学者のデカルトによって「人間の精神は思惟をその本質とする実体として、延長をその本質とする物体のカテゴリーに含められる身体と峻別され、身体とは連続的な因果の鎖でつなぐことのできない別枠の認識対象として留保される」という近代的な物心二元論が展開されました。

 

デカルトの近代的な物心二元論に影響を受け、19世紀後半のドイツから実験心理学の研究室が開設されていきました。

 

これが科学的な心理学のスタートであり、それ以前の「長い過去」とは明確に区別されます。

 

心の世界の研究にも機械的因果の立場にたつ実験的方法を導入し、観察結果や実験結果を単純加算的に処理する数量的比較の視点をもちこんだ「近代方法論の採用」をもって学問としての心理学の歴史が始まったとするのが正式な心理学の学史観です。

 

このように「歴史の流れが変わった」という明瞭な段階にあった19世紀中ごろに、心理学史に関する書籍が出版されています。

 

代表的なものとして、クレムの『心理学史』やボーリングの『実験心理学史』などがあります。

 

そして、さらに時代を下り、1960年代以降は短い歴史の中で心理学がより複雑なものとなっていきました。

 

また、1980年のドイツのライプチヒで開催された国際心理学会議をきっかけとして、新たな史料の掘り起こしを含む心理学史研究そのものへの積極的関心も高まりました。

 

1980年代以降に著された心理学史や学史研究論文においては、生物学などの自然科学の歴史や科学的な社会学などの先行領域から、方法上の参考となりそうな新しい考え方や技法を積極的に取り入れる努力は必要かつ有効であるという考えが広まりました。

 

また、心理学が本質的に社会的性格の強い学問であるものの、それと同時に、心理学が心身問題を核とする固有の認識論の歴史を抱え持つ特異な学問であったことを自覚した独自路線の開拓も依然として必要な段階にあるという考え方もあります。

 

つまり、他の「大先輩にあたる学問」の良さも取り入れつつ「心理学としての独自性」もしっかりと受け継いでいくということです。

 

 心理学史は日本国内だけでなく、海外でも専門の研究者が少ないのが現状です。

 

しかし、過去に起こったことに対する学史的意味づけがどのようなものなのかによって、未来の学問の方向が決定づけられていくことになります。

 

そういった意味でも、心理学史の研究と専門家育成は非常に重要な要素となっているのです。

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