心理

2018/10/3

理論心理学とは

 心理学には様々な理論があります。そういった様々な心理学の理論を中心として、学問としての心理学のあり方を検討・吟味する分野を理論心理学とよびます。
 
 心理学は元々、実証主義の影響が強く、実験や調査などの自然科学的な方法による研究が主流となっています。さらに、近年では、社会・文化・歴史の中での人間行動を対象とするフィールド研究も登場するようになってきています。フィールド研究とは、大学の実験室ではなく、実際に日常生活を送っている人々に対して、より具体的で自然な実験や調査に参加してもらい、データを収集する方法です。そこで重要となるのは、科学として正確であるかということです。心理学は研究手法が広がると同時に、対象とする範囲も広範囲であるため、多角的に「この心理学の研究は科学として、ちゃんと成立しているか?」を確認する必要があります。そこで、哲学やメタ理論の立場から、科学としての心理学を科学哲学や科学論などとの関連で、方法論を含めて問題として、心理学理論を吟味する必要があります。また、今日の心理学の理論の歴史的起源をたどり、その分析によって批判的に反省し、新たな仮説や問に基づく理論化の方法を提案していくことも必要となっています。これらの活動を進めていくのが、理論心理学なのです。
 
 理論心理学において重要となるのが、メタ理論という考え方です。
 メタ理論とは、心理学の何らかの理論のさらに前提となる理論のことであり「理論の理論」とよばれるものです。心理学の理論には、様々な前提や見立てが入り込んでいること明らかとなっていますが、これは、哲学や経済学などの心理学よりも歴史的に古い学問領域から、心理学が影響を受けているからです。
 また、日本語では「心理学」の前に感じ2文字がついて、分野・領域を示すことが多いわけですが、これは社会心理学なら「社会学」+「心理学」であり、認知心理学なら「認知科学」+「心理学」であり、教育心理学なら「教育学」+「心理学」というように、特定の学問領域を心理学的な観点から検討しているものも多くあります。そのため「そもそも、哲学ではこのように考える」や「社会学の領域では、このように捉える」などのように、大前提となる理論があり、それが心理学的な検討において妥当となるのかを改めて確認する必要があるわけです。
 また、理論心理学は、ポパーやクーンによる科学哲学の確立・普及から強く影響を受けています。心理学は人間の心という見えない対象を扱うこともあって、そこにモデルが多用される分野であるとされています。「〇〇モデル」という場合、それは理論に立脚して、心理的過程を推測するものであり、目に見えない人間の心の状態を「おそらく、こうであろう」と捉えるものです。
 
 このような理論とモデルに基づく心理学において、特にポパーば提唱した批判的合理主義による検討が重要であるとされています。ポパーは、科学哲学の立場で全ての認識は誤りを犯しがちであり、それはたとえ科学者などの専門家であっても同様であるとし、知(知識・知性)を批判によって適切にしていくことが合理的であるとしています。ポパーが提唱した考え方の中で有名なものに反証可能性の原理というものがあります。たとえば「白鳥は白い」ということを科学的・論理的に証明するためには「世界中の白鳥を調べた結果、白以外の色の白鳥はいなかった」というだけでは不十分であり、「もし、黒い白鳥が発見されたとしたら、白鳥 = 白 という理論は崩される」ということが保証されていなければならないわけです。つまり「この理論は正しい」ということが証明できるだけではなく「もし、〇〇ということが明らかになったら、その理論は正しくなかったと証明できる」という余地がなければならないのです。この反証可能性の原理に基づいて、ポパーは様々な学問領域の理論について検討しています。そして、物理学における相対性理論には反証可能性があるものの、経済学におけるマルクス主義の理論やフロイトが提唱した精神分析の理論などについては、反証可能性が確保されておらず、これらの理論は科学と“非科学”の境界線上にあるとしています。しかし、こうしたポパーの科学哲学も、クーンの『科学革命の構造』の中で批判されている部分もあり、論争をよんでいます。
 
 心理学はカウンセリング等の実践的なものも含めて、科学的であるかどうか、ということが重要です。その中で、理論を科学的に検討することはより効果的な支援を進めていくためにも、無くてはならないものであると考えられます。

ページ一覧に戻る