心理

2017/12/21

限局性学習症(学習障害)とは

 限局性学習障害とは、これまで「学習障害」とよばれていたものが名称変更されたものです。同様に限局性学習症は神経発達症に分類されますが、この神経発達症という用語も、以前は「発達障害」とよばれていました。
 
 限局性学習症とは、知能指数(IQ)には特に問題がないものの、「文章を読むことだけ」とか「計算をすることだけ」が上手くできないという症状を示すものです。そのため、限局性学習症には下位分類として、書字障害や読字障害、算数障害などが設定されています。これは学校の授業で先生から教えてもらっても改善するものではありませんが、では、当事者の児童・生徒が勉強に不真面目かというと、決してそうではないという状態です。
 また、不得意ではない教科や科目については何のも問題もなく、授業にもついていけます。従って、これまでの名称である「学習障害」では、「勉強全般ができない・支障がある」というニュアンスで受け取られやすいため、「限局性学習症」と名称を改めることで、「特定の限られた分野の学習にのみ問題がある」というように、実際の症状の状態に合わせた改訂が加えられたのです。
 日本では、日本LD学会(LDはLearning Disorderの頭文字の略で「学習障害」の意)という学術団体があり、精力的な研究活動が実施されています。限局性学習症(学習障害)をメインとする学術団体があるということは、それだけ注目されているということでもあります。そして、2017年は10月に日本LD学会の年次大会が開催されています。
 
 限局性学習症に関する研究や治療・支援の歴史は古く、モーガンによる先天性語盲に関する記述は、最初期の言及の1つであるとされています。また、ストラウスとウェルナーは、多動性・衝動性・被転導性(外的な刺激により注意集中が阻害される傾向)、思考障害など脳損傷者の行動特徴を持つ子どもの存在を示し、それを脳障害児(brain-injured child)として記述しました。
 これは、現在の限局性学習症の症状に加え、注意欠如・多動症(AD/HD)の症状も含まれていると考えられます。従って、当初は2つの神経発達症(発達障害)の明確な区分がまだできていなかったということになります。
 さらに、クレメンツはストラウスらの考えに基づいて、微細脳損傷(MBD)という用語を提唱しました。その後、カークが、これらの疾患群の中でも学習上の障害に着目し、学習障害という用語を初めて使用しました。学術的・医学的には、しばらくの間、微細脳損傷(MBD)と学習障害(LD)が混在している時期が続きました。現在はMBDの中の1つの症状としてLDという位置づけから、LDは独立した病態として扱われるようになりました。また、精神疾患の診断マニュアルであるDSM-Ⅲ-Rからは、学習障害と注意欠陥・多動障害が分けられ、さらにはDSM-Ⅳからは、学習障害と運動スキル障害、コミュニケーション障害が区別されるようになりました。そして、DSM-5からは学習障害という名称から、限局性学習症という名称へと変更されています。
 
 限局性学習症の治療・支援に関しては、知覚や運動等の神経心理学的障害を仮定するものがあります。そして、その仮定に基づいて、プロセス訓練を実施することで、学習が可能になるとしています。この治療・支援モデルは、カーク、クルックシャンク、マイクルバスト、フロスティグ、エアーズ、ケファートらによる代表的なアプローチとなっています。これに対して、ハミルは前述のプロセス訓練が学習能力改善につながらないとしており、読み・書き・算数の学習の遅れのある領域に系統的課題を設定し、指導を行う系統的指導という手法を提唱しています。
 
 限局性学習障害に関する研究が進み、様々な科学的根拠に基づいた知見が蓄積されることで、多くの人が症状を正しく理解するようになってきています。そのため、学校などの教育機関においても、症状を示す児童・生徒への適切な学習サポートが広がりつつあります。

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