心理

2017/6/27

睡眠の心理学

 睡眠は心身の健康を維持するために非常に重要なものです。睡眠については、心理学の中でも特に生理心理学の分野で様々な研究が実施されています。生理心理学の研究の結果として、睡眠中は脳の活動が一時的に抑制されるため、体も心も休息している状態になることが判明しています。また、自律神経の活動も副交感神経が優位となり、リラックスすることができます。そのため、精神疾患等によって、睡眠に障害が発生することがあります。
 
一般的に眠れない状態である不眠が精神疾患と関連すると思われがちですが、逆に眠り過ぎてしまうという過眠も、バランスの良い睡眠とはいえないため、問題のある症状であると考えることができます。さらに、不眠の場合は「寝られなさ」に関する細かい分類があります。たとえば、不眠には寝つけない、途中で目が覚めてしまう(中途覚醒)、何の理由もないのに早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)という3つの種類があります。また、夜に眠れなかったことによって発生する可能性の高い、日中の強烈な眠気なども付随する症状の1種となります。精神疾患の診断マニュアルであるDSM-5にも、うつ病(DSM-5)の診断基準として「不眠または過眠」という項目があります。睡眠のバランスが崩れているという状態が診断基準となるのは、うつ病(DSM-5)だけではなく、持続性抑うつ障害や双極Ⅰ型障害、双極Ⅱ型障害、気分循環性障害などです。ただし、これらの精神疾患は睡眠のバランスは診断基準の1部であり、感情(気分)などの問題がメインの症状となります。一方で、睡眠のバランスそのものが診断基準のメインとなる精神疾患もあります。不眠障害や過眠障害などの睡眠-覚醒障害群に分類される精神疾患は、睡眠そのものの問題が主となるものです。
 
 これらの睡眠のバランスの問題を含む精神疾患は、心理カウンセリング等の治療を受けることで、改善していくことが判明しています。従って、睡眠の質や量が向上していくことが、治療の進み具合を測る指標となるわけです。しかし、睡眠中は明確な意識があるわけではないので、「本当に眠ることができていたのか?」ということを確認するのは簡単なことではありません。ただし、睡眠の質や量について科学的な根拠に基づいて、測定・評価する方法がいくつかあります。最も精度が高いのは脳波計による脳波の測定です。睡眠時と覚醒時では、脳波が明確に異なり、また、睡眠の深さによっても脳波が異なります。脳波の測定は生理心理学的な側面だけではなく、医学的な観点からも高い精度であるとされています。次いで、自律神経の活動を測定することで、睡眠の状態を客観的に把握する方法があります。これは、脳波よりは精度が劣る部分がありますが、睡眠時に副交感神経が活性化することが判明しており、有効な指標となります。
 
 自律神経活動の測定は、心拍センサー(ウェアラブルセンサー)などを使用することで測定・評価が可能です。また、質問紙形式の心理検査による測定・評価も可能です。アンケート形式のため、脳波や自律神経の測定と比較すると、客観性や精度は落ちますが、比較的簡単に実施することができ、データの採点・分析も手軽にできるというメリットがあります。睡眠に関する質問紙形式の検査の代表的なものとして、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、アテネ不眠尺度(AIS)、セントマリー病院睡眠質問票(SMH)、起床時睡眠感調査票、エプワース眠気尺度表(ESS)などがあります。睡眠の質や量など総合的な状態を確認するのが、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、アテネ不眠尺度(AIS)、セントマリー病院睡眠質問票(SMH)です。起床時睡眠感調査票は起床した直後に回答することが決められており、睡眠の問題と同時に、すっきりと起きることができているかどうかを判定することができます。エプワース眠気尺度表(ESS)は、睡眠障害の1種である睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断に利用することができます。質問の内容は睡眠そのものよりも、日中、活動をしている際に突然眠ってしまうなどの症状を把握するために活用されています。
 
 睡眠中、私たちは明確な意識がない状態であるため、「ちゃんと眠れているのか?」や「なぜ、眠れないのか?」ということが分かりません。そこで、これらの検査を利用することで、睡眠の質や量を客観的に把握することが大切なのです。

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