心理

2018/2/28

環境心理学とは

 心理学の1分野に環境心理学というものがあります。環境心理学は基礎分野とも異なり、臨床分野とも異なるもので、社会的な背景を強く持つ応用分野に位置づけられています。また、2008年に日本環境心理学会が創設されており、研究発表などが盛んに実施されています。
 
 環境心理学とは、自然環境と人工的な環境を合わせた物理的環境と人間の行動・経験との間の相互交換・相互作用を扱う心理学の研究領域です。
 私たち人間は環境を変容させ、また、私たち人間の行動・経験は環境によって影響を受けています。自然環境の破壊や、人工的環境の増大、都市環境の悪化、生態系の破壊などの環境の問題がクローズアップされるにつれ、それによる人間への影響、環境改善について科学と社会の関心が強まっています。
 そこで、近年、特に社会 = 物理的環境が注目を集めており、同時に環境心理学の研究も盛んに進められるようになりました。このような問題に積極的に取り組むため、心理学者のプロシャンスキーらは、環境心理学として新たな視点を提唱しました。それまでも心理学では環境や人との相互作用に注目していたのですが、プロシャンスキーらはこれまでの伝統的心理学で扱われた対象のもつ刺激を個別に扱うのではなく、環境を一つの意味のある全体として捉えるべきであるとしました。
 たとえば、環境を住宅や公園、図書館、都市空間のように統一されたものとして把握することがそれにあたります。また具体的な問題解決に向けて理論と応用の連結を強化すべきであるとしています。さらに、人にとって好ましい環境とは何かといった目的志向的存在として、環境を捉えることも重視しています。また、学際的側面も強調され、他の学問分野との連携も非常に重要であるとしています。そのため、現在の環境心理学は、社会心理学認知心理学コミュニティ心理学、交通心理学などの心理学分野に加え、建築学や都市社会学などの知見・理論、方法論を取り入れています。
 
 このように環境心理学は、様々な物理的環境に関する様々な人の作用を関連させた科学的知識を発展させることを目的とする学問分野です。そこで扱われる領域は、環境認知の内的な状態から具体的行動に、環境も身近な部屋のインテリアから地球規模の環境と広範囲にわたるものとなっています。
 
 環境心理学における主な研究対象として、環境知覚・評価における美的評価や態度があります。これは、生活環境における「住み心地の良さ」や「デザインの良さ」などが含まれます。自分の目で見て、実際に住んでみて、それが心地良いかどうかは、私たち人間の判断・評価によるものなのです。そして、判断・評価は私たちの態度としても表現されます。それによって「行きたいと思う場所」や「過ごしやすい空間」が形成されていくのです。また、環境を知覚した後には、環境を認知するという機能が私たちには備わっています。たとえば、認知地図や探索などがそれにあたります。社会心理学との関係では、プライバシーや対人距離、テリトリアリティ(なわばり性)、クラウディング(人込みや渋滞などの「群れ」の状態)など、空間を媒介とした他者との関係性などがクローズアップされています。そして、環境の悪化に関する問題として、災害や混雑、騒音、大気汚染、交通渋滞などと、それらによってもたらされる人間への影響としての環境ストレスの問題があります。さらには、環境保全と私たち人間の行動変容について、保護と開発問題、リサイクリング(リサイクル)、エネルギー対処、社会的ジレンマも環境心理学における主要な研究テーマとなっています。また、特定の環境として主に取り上げられる対象は、住宅や地域コミュニティ、施設(学校・病院・老人ホームなど)、都市空間、仕事場(企業等の職場環境)、子どもが遊ぶ環境などがあります。

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