心理

2017/12/21

森田療法とは

 心理カウンセリングの現場では多くの心理療法が実施されています。そのうち、ほとんどの心理療法が欧米で研究・開発され、日本に“輸入”されたものです。しかし、ごく少数ではありますが、日本で研究・開発された心理療法も存在します。森田正馬によって創始された森田療法もその1つです。森田療法に関しては、日本森田療法学会という学術学会があり、精力的に研究活動を進めています。また、2017年は11月に年次大会が開催されます。
 
 森田は、ヒポコンドリー性基調とよばれる、いわゆる“神経質な性格”を背景に持つ人は、心身の不調に注意が向くことで主観的な苦痛・苦悩が増大してしまうという精神交互作用が働きやすいと考えました。そして、それが病的な発展を遂げることで、神経症(メンタルヘルスの不全)が発生するのではないかと考えました。
 そこで、精神交互作用を生み出す「とらわれ」と「はからい」を脱し、自己実現に向かって進んでいくことで、神経症の治療・支援が可能になるのではないかと考えました。こういった観点から開発されたのが森田療法です。森田療法では、最初の約1週間を臥褥期(がじょくき)とし、一切の活動を禁じ、不安への直面と活動意欲の活性化を図ります。次いで軽作業期、重作業期、生活訓練期と進めていく中で、徐々に活動・作業の割合を増やし、同時に「気分本位」から「目的本位」へと認知様式を変化させていきます。より具体的には、まず不安があることを自然な事実として「あるがまま」に受け止め、心身の不調や症状がある状態のまま、作業など具体的な行動を実行していきます。神経症のクライエントの中には「この症状さえなくなれば…」という防衛単純化という考えに囚われ、活動が思うようにできなくなっている人もいます。森田療法のプログラムの中で、クライエントは自身の注意が症状から離れている瞬間を体験することができます。そして、これまで回避していた問題にも直面するようになります。森田療法の治療者(実施者)はクライエントに対して、原因や理論を追求しない不問的態度をとり、日記を使用した指導を進めていきます。
 
 森田療法は明治から昭和前期にかけての日本の思想・文化を基礎とした治療・支援手法であり、禅(座禅)との類似性も指摘されています。一方で、時代・文化を超えた普遍性をもつ治療・支援の手法として現在も発展し続けており、海外へも広がっています。従って、欧米で開発された心理療法の“輸入”が中心の日本において、逆に海外へ療法を“輸出”するということも起きているのです。海外では、神経質傾向や神経症以外の対象への森田療法の適応の拡大も試みられています。アメリカではレイノルズによる「建設的な生き方」、カナダではイシヤマによる外来森田療法とカウンセリングとの統合的治療、中国では日本と同様な形での入院・外来森田療法が実施されています。
 
 森田療法の発展・変化の具体的な例としては、治療場面の治療者の自宅などから病院等の医療機関へと移行する、1週間の臥褥期などを病院に入院して実施することが困難なクライエントに対する外来森田療法の発展、森田療法を実施する自助グループの発展などがあります。この自助グループは生活の発見会とよばれ、現在でも活動が継続されています。生活の発見会は、1957年に創刊された同人誌『生活の発見』の購読者を会員として組織され、クライエント同士が森田療法の理論について相互に学習するためのグループとして各地で活動を開始しました。そして、1972年からはこのグループ活動を「集談会」と称し、集団学習運動として全国的な組織に発展させました。集談会では匿名性を重んじながら、会員が司会者を中心に自らの神経症体験を語り、互いに助言、援助し合うという方法で活動しています。

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