心理

2018/7/30

心身医学とは

 心身医学とは、主に心身症を対象とする医学のことであり、それに関連してストレスや心身相関、さらに患者の身体面(bio)だけでなく心理面(psycho)、社会面(socio)をも含めて総合的・統合的な治療・支援を実施する全人的医学と定義されています。
 まず、心身症とは、日本心身医学会の定義によると「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態のこと。ただし、うつ病などの精神障害に伴う身体症状は除外する」となっています(2018年は6月に日本心身医学会の年次大会が開催予定となっています)。心身症の代表的なものとして、胃潰瘍や片頭痛、過敏性腸症候群などがあります。また、精神科医のシフネオスらは、心身症では心理的因子は身体的諸因子とともに病状形成の一要因に過ぎないとしており、身体症状の比重が大きく、失感情症(アレキシサイミア)という概念を提唱し、自分の内的な感情への気づきとその言語的表現が制約されている状態であるとしました。現在では、失感情症(アレキシサイミア)も代表的な心身症の1つとして知られています。その他、臨床心理学者の池見酉次郎は失体感症という概念を提唱しています。これは、心身症のクライエントは失感情症だけでなく、自分のホメオスタシスの維持に必要な身体感覚への気づきが鈍いという状態であるとしています。
 
 クライエントの社会適応という観点からも、心身症の研究が実施されています。それによると、心身症のクライエントはパーソナリティ傾向として、真面目・仕事中毒・頑張り屋・頼まれると嫌といえないなどの「過剰適応」(over adaptation)の傾向が強く認められるとされています。このような心身症のクライエントの性格特徴を受けて、心理学者のフリードマンとローゼンマンらはタイプA行動パターンという概念を提唱しました。このタイプA型に分類される人は、野心的で競争的・攻撃的・性急で、さらに仕事熱心という行動様式を特徴とし、そうでない人と比較すると、虚血性心疾患になりやすく、また重症化しやすいということも判明しています。
 
 これらの心身症の治療・支援をする分野が心身医学ですが、近年ではその対応領域が拡大しており、感染症や免疫症、さらに悪性腫瘍(ガン)、慢性疾患や,ICU(intensive care unit)、CCU(coronary-care unit)、火傷等の救急処置を必要とする場(burn unit)、人工透析、臓器移植、ターミナルケアにおいても重要視されています。また、心身医学研究の主要テーマとしては、①心身相関の科学的研究、②全人的医学の教育・研究・実践、③気づきとセルフ・コントロール医学の研究・応用、④コンサルテーション・リエゾン精神医学の研究と実践、⑤行動科学的研究の発展、⑥不定愁訴症候群や慢性疲労症候群、軽症うつ病、限局性恐怖症などの病態の解明と治療方針、⑦生活の質(QOL: クオリティ・オブ・ライフ)の研究と実践,⑧生命倫理(bioethics)の研究実践などがあります。
 
 心身医学の基本的な要素として重要なのが心身相関という概念です。心身相関とは、心と身体が互いに密接な関係にあり、心の動き(感情)は何らかの身体的変化を引き起こし、また逆に身体的変化(痛みなど)は何らかの心理的変化(心理的反応)を引き起こす現象と定義されています。偶然に心身の状態がよくない時に出現し、特別の条件が加わらなければ消失していくはずの身体症状(たとえば頭痛や肩こり)、あるいは、それほどひどくなることもなく経過するはずの身体症状であるにもかかわらず、精神的に囚われてしまい、注意の集中が起こり、その身体部位の感覚が鋭敏となり、機能も亢進し、その結果、身体症状をより強く感じるという悪循環が形成され、身体症状の持続・増悪が進むということです。心身相関のメカニズムとして、内的・外的刺激によって、大脳辺縁系で引き起こされた欲求や感情が大脳新皮質の働きにより適切に処理されず、視床下部に影響が及び、自律神経系・内分泌系に変調が起こり様々な身体症状が出現する、または条件づけが起こった結果、症状が現れるというメカニズムが考えられています。
 
 心身医学では、心身症のメカニズムを生理学的だけではなく、学習心理学(行動分析学・応用行動分析)の観点からも捉えています。そのため、治療・支援において、自律訓練法やバイオフィードバック療法、行動療法などが実施されることが多いというわけです。

ページ一覧に戻る