心理

2017/10/27

コラージュ療法とは

 心理療法の1種に芸術療法というものがあります。
 
 芸術療法とは、様々な芸術作品を創造する活動に従事することを通じて、心身の健康を回復することを目的とするものです。芸術療法全般に共通する特徴として、言語的・論理的に基づくものではなく、イメージによって自己の内面を表現することにより葛藤の解消を目指す、投影法の心理検査によるアセスメントの機能により対象者の無意識の部分にアプローチできる、芸術の創造活動がリハビリテーションとして効果を発揮するなどがあります。しかし、具体的にどのような変数によって、どれくらいの効果をクライエントに及ぼすことができるのかという点については、まだ十分に明らかにされているとは言えません。そのため、現在でも心理学的な観点からの研究によって、効果や影響、精度などが検討され続けています。
 
 芸術療法の代表的なものとして、人物画・風景画・家族画などを描く絵画療法、音楽を聴くだけではなく、演奏や作曲などを行う音楽療法、俳句・短歌・詩などを創作する詩歌療法、砂の入った箱の中で小型の人形や模型などを用いて創作する箱庭療法、焼き物などを作成する陶芸療法、音楽にあわせて身体を動かす(ダンスをする)舞踏療法、そして、既存の新聞や雑誌から切り抜いたものなどで貼り絵を行うコラージュ療法があります。
 
 本来、コラージュという言葉は「にかわによる貼り付け」という意味のフランス語です。雑誌やパンフレットなどの絵や写真、文字などをハサミで切り抜き、台紙の上で構成して貼り付けるというものである。コラージュという手法はピカソなどによって絵画の技法として20世紀の初めに誕生しました。芸術家による独自の創作ではなく、雑誌や写真などの社会的産物を利用して作品にするという発想は、その後の芸術に大きな影響を与えました。
 
 コラージュ療法は、フロイトの創始した精神分析・精神分析療法の対象者への無意識にアプローチするという部分が、その源流があるとされています。コラージュが心理療法の手法として確立された時期については、あまりはっきりとは分かっていません。むしろ、療法として確立される以前から、精神疾患のクライエントは自主的にコラージュ作品を作っていたことが判明しています。ですが、その段階では、クライエントの作る作品の心理学的な重要性は見逃されていました。確認できる範囲では、1970年代初期にアメリカで作業療法の1つとして、コラージュが取り入れられたとされており、その後に芸術療法としても取り入れられるようになったとされています。欧米では元々、様々な芸術的技法が心理カウンセリングの現場で使われていた関係もあり、コラージュの心理療法への応用が早い段階で見受けられます。日本において、コラージュ療法は欧米からの「輸入」ではなく、独自の起源によって今日まで発展してきたとされています。日本の場合、コラージュ療法の直接のモデルは箱庭療法であり、箱庭という道具・設備のない環境においても効果的かつ簡便な方法として誕生しました。その中で、箱庭療法とコラージュには本質的な部分で類似点が多いことに専門家が気づき、コラージュの重要性がクローズアップされました。この段階で、コラージュは箱庭療法の「手軽な代用品」ではないという位置づけを得ることになりました。
 
 コラージュは身近にあるパンフレットや雑誌から題材を借りることで、絵が描けない幼児から高齢者まで幅広く適用することができます。また、対象者は精神疾患の方だけではなく、心身が健康な方にも適用可能です。コラージュは日常的に見慣れたイメージを素材にするため、安全・安心な状況の中で実施が可能です。また、アイテムを切り抜き選択する、貼り付けるというそれぞれの段階において、「表現したくないこと」を忌避でき、自身の感情とは無関係なイメージを敢えて貼り付けることもでき、「あえて表現しない自由」や「あえて避ける自由」がクライエントに与えられているという特徴があります。ただし、その分、専門家による解釈が多岐にわたる可能性があるため、教育や訓練が重要となります。

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